新福岡市長誕生(2)現職惨敗 元陣営幹部「本当の敗因 分かってない」 [2010年12月3日14:40更新]

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(10年11月号掲載)

涙ながらに敗戦の弁を語る吉田宏氏(11月14日)「やっぱりか・・」

11月14日夜、中央区春吉の吉田宏氏の陣営事務所。時計の針が午後8時を回った直後、高島宗一郎氏当選確実とのテロップがテレビ各社で流されると、“その時”を待っていた支援者らは静まり返った。一部からは「やっぱりだめだったか」と囁く声が漏れ聞こえた。 

午後9時すぎ、拍手で迎えられた吉田氏は「力不足で申し訳ない。結果は受け止める」と涙を浮かべながら厳しい表情(写真)

「私は正々堂々と戦った。だが途中から一体何と戦っているのか分からなくなった」



外交問題などで菅内閣への批判が高まり民主党の支持率が急落。一方、当初は政党色を薄める戦術を採っていた高島陣営は、中央での状況を踏まえて方針を転換、次々と自民党著名国会議員が福岡入りして菅内閣・民主政権を批判した。

また選挙戦最終盤には、元市幹部の植木とみ子候補が突然、保守票の一本化を狙うとして撤退を表明。吉田陣営は「選挙妨害とも受け止められる」と抗議する文書を発表していた。

吉田氏の「何と戦っているのか分からない」との発言は、自らの選挙戦に不利に働いたこうした状況・要素を示唆したものと思われる。 

冷ややかに見る4年前の陣営関係者

06年の前回選挙で現職有利との下馬評を覆して初当選した吉田氏。だが「白紙に戻す」としたこども病院移転計画については見直した末に人工島(東区)への移転を決定、市民からは「公約違反だ」と激しい反発を受けた。

また任期中に行われた計3回の国政選挙で中立の立場を取ったことから前回、吉田氏を擁立・推薦した民主県連内からは「連携不足だ」と憤る声も上がった。 

 

そんな状況の中、7月には一部国会議員が元佐賀市長の木下敏之氏を擁立しようとする動きが表面化。最終的には現職推薦に落ち着いたものの、吉田氏は地元市議団とともに孤立、ほとんどの国会議員は吉田氏支援の姿勢を見せず、支持母体である労組の一部も木下氏へと流れてしまった。 

「この4年で福岡はいい市政になったと思う。私は何1つ間違ったことはしていない」。取材に答え、きっぱりとこう言い切った吉田氏。

しかし、前回選挙で選対本部の幹部を務めたある支援者は、そんな吉田氏の様子を見つめながらこうつぶやいた。「本当の敗因が何なのか、まったく分かっていない」(関連記事は近日中にアップ予定)。 

 

吉田氏に固執した民主の江藤博美市議らは県連役職からの辞意を表明。古賀一成・民主県連代表への批判も高まり、今後は一波乱ありそうな雲行きだ。 

【注】本紙指摘通り、民主県連では古賀代表が市長選敗戦の責任を取る形で辞任、新代表に野田国義衆院議員が就任するなど執行部が刷新された。

「福岡に骨を埋める」木下氏

無名の新人ながら約7万4000の票を得た木下氏。マスコミ記者の間では「市長のタマとしては候補者中1番」と非常に評価が高かった。

ある民主国会議員は「もう少し彼が根回しをしていれば・・。結果的には、彼を推していれば十分チャンスがあっただけに、残念だ」 

木下氏は選挙後、「福岡に骨を埋める覚悟」をコメント。今回の選挙で多くの市民の支持を得たことを糧に、捲土重来を期していただきたい。