大分・日田市 肥育牛飼育事業(1)「水質汚染の可能性」と反対運動 [2010年11月24日10:03更新]

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(10年10月号掲載)

大分県日田市天瀬町塚田地区の本川牧場所有地大分県日田市天瀬町で、同県と地元牧場が計画している肥育牛飼育施設事業をめぐり、「地下水や川が汚れる可能性がある」として、地元の反発が強まっている。

こうした声を受け県はすでに水質調査に着手、先月末には衆院調査局環境調査室が現地を視察する事態に。ただ、土壌調査では基準値を上回る数値は出なかったとされ、牧場側も「環境配慮に努めている」と反論、両者の着地点は見えない。

福岡・熊本両県と接し、福岡都市圏の水がめである筑後川水系に位置する日田市。現地を取材すると、ある地元企業の存在、そして街のイメージをめぐってこじれてしまった「感情的なあつれき」が浮かび上がってきた。  



 

同事業は大分県農業農村振興公社が主体となり「本川牧場」(日田市高瀬、本川角重社長)が同市天瀬町塚田地区に所有する土地(約260ha、写真)に牛舎や分娩舎、排泄物処理施設を建設し、飼料を栽培する畑も整備する計画。

この土地は標高約700mに位置し総事業費は14億3800万円、うち最大55%を国が補助する予定。飼育予定頭数は約2200で、完成した施設は同牧場が運営することになっている。 

畜産業の盛んな九州各県の中でも大分県はブランド牛の「豊後牛」で知られ、今回の計画も豊後牛の生産拡大を狙ったもの。本川牧場は全国トップクラスの乳牛飼育頭数を誇る。官民一体で行う一大事業である。

大分県日田市 肥育牛飼育事業予定地

予定地に堆肥投棄  

ところが地元では激しい反発が。それは、同牧場がこの予定地に牛のふん尿からできる堆肥を大量に投入していた事が明らかになり、土壌や水を汚す恐れが出てきたからだ。 

「水の汚染は命や生活に関わる重大な問題」(ある地元関係者)。予定地は筑後川の支流である出口谷川や合楽川に近く、土壌が汚染されればこうした河川、ひいては筑後川の水質に影響を及ぼす可能性があることは否定できない。 

地元の反対を受けた県は予定地の土壌調査を実施。その結果「問題ない」とされたものの反発は収まらず、地元の3行政区でつくる五馬地区環境対策協議会は今年5月、大分県と日田市に計画の中止を陳情。さらに9月には衆院調査局環境調査室が現地を視察し住民から聞き取り調査を行った。

過去には異臭騒動  

対立の発端は7年前にさかのぼる。03年6月、本川牧場で牛のふん尿を堆肥化する過程で発酵臭が発生、周辺に漏れて同牧場のある高瀬地区周辺で異臭騒動が起きた。

住民からの多数の苦情を受けた日田市は改善を要請。同牧場は翌04年、脱臭装置を設置し、問題はいったん沈静化した。

ところが昨年になって予定地に大量の堆肥が入れられていることが発覚。住民からは「飲み水が汚染されるのではないか」との声が上がり、市議会でも取り上げられた。  

(続く)