柳川市議選 元議長がトップ当選 再び市民の対立招く恐れも [2010年11月16日10:46更新]

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(10年10月号掲載)

柳川市議会の様子定数24(30から削減)に対し26人が立候補した柳川市議選は10月3日、投開票が行われた。昨年2月、不祥事を理由に議員辞職した元議長・田中雅美氏が約3000票を集めトップ当選した。投票率は69・36%で前回の77・00%を大きく下回った。 

また石田宝蔵前市長時代の与党会派「柳志会」は立候補した7人全員が当選。このため関係者の間で「石田氏は来春の県議選に出馬するのではないか」との観測が広がっている。 



 

1年半という時間、3000の票数は、はたして「みそぎ」に十分なのだろうか。 

08年12月、田中氏が自宅で開いた忘年会で知人を殴った上、その場に暴力団幹部が同席していたことが09年1月、地元紙の報道で発覚。その直後には暴力団幹部が何者かに銃撃された。

市民やメディアから「議員を辞職すべき」との声が上がったが、田中氏は議長職は辞任したもの議員職には止まり続けた。また市議会では議員辞職勧告決議案が提出されたが審議されないまま廃案に。田中氏だけでなく議会に対しても市民から批判が相次ぎ、「擁護派」との対立が表面化した。 

自らの不祥事によって柳川のイメージを損ない混乱を招いた上、窮地に追い込まれていた石田市長(当時)に絶好の反撃の口実を与えたことを、よもやお忘れになったわけではあるまい。 

水面下で燻る田中氏への反発  

「田中氏はあれだけの事をしてなぜ今回出馬するのか」。市議選前、本紙には柳川市民からと思われるこうした意見が複数、寄せられた。騒動から1年半以上が過ぎた現在でも、一部市民の間に田中氏に対する反発や批判が存在するのは事実である。 

ちなみに「金子健次市長は田中氏の子飼い」とする声も本紙に寄せられた。この見方は08年末、田中氏が代表取締役を務める食品会社が、別の会社の野菜産地偽装に加担した疑惑が浮上した直後から流布されていた。

翌年4月に市長選を控え金子氏は出馬へ向けすでに活動を始めていた時期。ある地元民放記者は「金子氏が市長になれば田中氏が市政を牛耳ることになる。それでもいいのか」と興奮気味に筆者に語っていた。 

このような根拠のない誹謗中傷(もし具体的な事実があればぜひ本紙までご連絡いただきたい)の出所は、もちろん石田氏周辺だ。地元記者を巧みに情報操作し田中氏を攻撃することで間接的に金子氏をおとしめる戦術だったのは明らかだ。

田中氏が金子氏を支持していたのは事実だが、こうした見方がいまだに市民間で燻っている以上、田中氏復帰で噴出する可能性もある。 

重い責任自覚すべき  

昨年の市長選で石田氏が敗れたことで野党会派となった柳志会。今回の市議選では元職を除く6人中4人が前回選挙から票を伸ばし、全員が上~中位に食い込んだ。田中氏への反発や、停滞していると評するしかない金子市政への不満が柳志会を躍進させた要因─こう考えるのが妥当だろう。 

「さらに今回は石田氏が柳志会の応援に奔走した」。こう話すのはある地元記者だ。不本意な形で市長の座を追われた石田氏だが、政治への意欲は衰えていないようで「来春の県議選で柳川市選挙区(定数1)から出馬するための布石では」(同記者)との見方が関係者の間で強まっている。 

田中氏が多くの支持を集めた事実を否定するつもりはない。だが石田市政の様々な「後遺症」を解決・払拭できずにいると、再び柳川に対立と混乱を招きかねないことを、田中氏にはぜひ自覚していただきたい。