鹿児島・処分場問題の本質(2)議会・マスコミのチェック機能働かず [2011年4月7日11:59更新]

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(11年3月号掲載)

鹿児島県庁前で抗議行動を行う住民ら(10年9月30日)以上の4点から本紙は、伊藤祐一郎・鹿児島知事が強引に進める処分場計画の本当の目的は、所有地を取得したり施設建設を請け負わせたりすることで、地元の有力企業である植村組グループに便宜供与を図ることなのではないかと指摘した(昨年10月号)。  

すでに鹿児島県は来月中に施設の建設工事を始めることを明らかにしており、着工へ向けて行政手続きを進めている。

これに対して反対派住民は何度も鹿児島県庁を訪れて抗議行動を展開してきた(写真)。その一方で、建設中止を求める訴訟の準備も着々と進めている。



反対派代理人の1人、高橋謙一弁護士(久留米市)は語る。

「事業に正当性はなく、これまでの手続きも不透明、不公正。一言で言えばでたらめな計画だ。だから基本的には、政治的に県を追い詰め、自分たちの力で建設中止を勝ち取ることを第一に考えている。それでも鹿児島県がわれわれの求めに応じない場合、その時こそ司法の場に訴える。その用意は当然、行っている」

反対派代理人らは現在、仮処分申請や住民監査請求などあらゆる可能性について検討しているという。また原告団は、数百人規模になる見込みだ。

チェックの重要性  

住民の声を無視する形で処分場建設へ突き進む伊藤知事。このような手法がまかり通っている要因の1つとして、県政に対するチェック機能がまったく働いていないことが挙げられるのではないだろうか。 

まず県議会(定数54)。「共産党議員はわずかに1人、典型的なオール与党体制で県政のチェックなど望むべくもない」(ある県関係者)。鹿児島は非常に保守的な土地柄・政治風土であり、県執行部と議会とが対立することなど基本的にはまずありえない。今回の問題も議会ではほとんど取り上げられていない。 

そしてマスコミ。一般的に行政担当記者の多くは、当局の発表をノーチェックで垂れ流すのが仕事だと考えているのが現実。鹿児島県政記者クラブも例外ではないようだ。

おそらく伊藤知事は「この程度の連中をちょろまかすのは簡単」と高をくくっていたのだろう。そうでなければ、これほど露骨な“田舎芝居”のシナリオなど書けるわけがない。 

反対派住民の提訴という事態をにらみながら、問題の本質を県民に伝えるべく取材を進めている記者が鹿児島にもいるはず─そう思いたいのだが。 

 

統一地方選が近い。福岡の読者の皆さんには、大分県別府市の問題も含め他県の例を知ることによって、行政をチェックする重要性について再認識していただきたい。