心の傷付いた人たちがものづくりで心を癒す「わくワーク館」 [2011年8月1日10:35更新]

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(11年7月号掲載)

木のおもちゃや多彩な木工キットなどものづくりをしながら傷付いた心を癒し、それに打ち込むことで職業訓練ともなり、社会への一歩を踏み出す。そんな考え方で地道に活動する障がい者施設が博多の街の一角にある。福岡市博多区神屋町、昔の博多の雰囲気が残る街にある小規模作業所「わくワーク館」だ。 

わくワーク館の取り組みは多種多様。温かみのある木のおもちゃづくりに打ち込む人や、抽象的な造形作品に取り組む人、木工工作キットの部品となる木型を切り抜く人、ペーパークラフトに取り組む人、パソコンでホームページに没頭する人。

さらに近くの第二作業所(同区対馬小路)では弁当やクッキーづくりなど、全部で20人ほどの人が思い思いの作業に取り組んでいる。 



「その人の個性に合わせて、無理強いせずに本当にやりたい作業に、それぞれのペースで取り組んでもらっています」と話すのは作業所代表の横溝千衣さん。

横溝さんは以前は病院で作業療法士として障がいのある人の支援をしていたが、「組織の枠にとらわれずに自分でやってみたい」と10年前、2001年9月にこの作業所を立ち上げたという。 

これを後押ししたのが、夫の彫刻家・造形美術家で福岡県美術協会会員の信介さん。横溝信介さんは美術としての彫刻だけでなく、商業美術や施設のジオラマづくりなど幅広い分野で活躍し、数々の美術展で賞を得ている人である。 

 

わくワーク館では横溝信介さんが指導員となって、ものづくりの初歩から専門的な領域まで丁寧に指導する。ものづくりは、作る過程の喜び、作り上げた達成感が得られ、それが自信となってその人の背中を押してくれる。

問題は最初の1歩。「最初でつまずくことなく、スムーズに作業に入っていけるお膳立てが大事です」と信介さん。そのために、同じ形を間違わずに切り抜ける道具など,さまざまな工夫を凝らしている。 

こうしたものづくりによってさまざまな作品が生まれ、それが商品となって利用者たちの生活と作業所を支えている。

なかでも人気商品は小学生などを対象にした工作キット。牛乳パックを使った小物入れなどエコ工作キット、トラックや列車などの動くおもちゃキット、写真立てやペンフォルダー、クラフトテープで編んだかごなどさまざまあり、留守家庭子ども会などから注文が舞い込む。夏休み前など、注文をこなすので大忙しという。 

利用者の中からは、抽象的な造形作品で福岡市美術展に入選した人も出ており、企業に就職できた人も何人もいるという。これまで任意団体でやってきたが今年6月、障害者自立支援法によるNPO法人として新たなスタートを切った。

「歩みはゆっくりですが、これからも利用者に寄り添って歩んでいきたいと思っています」と千衣さんは語る。

【問い合わせ先】 わくワーク館のHPはこちら
博多区神屋町4-16 今泉ビル2F ℡092-263-6676