(09年11月号掲載)
その目安は、障害基礎年金と合わせてどうやら生活の成り立つ月5万円。これを目標に各施設は創意工夫の努力を重ねているが、なかなか近づけないのが現状だ。 そうした中で、ヤマト福祉財団の「障がい者の働く場づくり応援プロジェクト」の支援を受け、賃金アップに奮闘する福岡市城南区の「さざなみ第2作業所」を紹介したい。 同作業所はてんかん、精神・知的障害などがある15人が通う施設で、98年に開設して今年で11年。素材と味にこだわったケーキづくりを中心に草取り、ビル清掃などさまざまな仕事を行っている。 同作業所は今年1月の本欄でリサイクルの「さざなみショップ」として紹介している。それが今回、「まるまるくんのお菓子屋さん」という名の店に変わっていた。同作業所が以前から作ってきた「自然派ケーキ まるまる屋」ブランドのケーキを主体とする店に、7月に改装したのだそうだ。実はこれ、「応援プロジェクト」の支援を受けての決断という。 ヤマト福祉財団はクロネコヤマトの生みの親の小倉昌男氏が、障がい者の自立と社会参加を支援する目的で、93年に私財を投じて設立した。応援プロジェクトはその事業の一環で、「地域で暮らせるように障がい者に高い給料を払いたい」という強い意志と実現可能性のある作業所や施設を全国から公募、認められた施設に1年間にわたって経営コンサルタントを派遣し、経営理念の再構築や目標設定、事業計画づくりを支援するものだ。 「当作業所は利用者の所得保障を設立理念に掲げて、賃金アップに努力し、少しずつ実績も上がってきたのですが、これ以上どうすればいいのか悩んでいた時にこのプロジェクトを知り、早速、応募しました」と施設長の大塚郁子さん。 しかし第1回の06年度、翌07年度と選に漏れ、やっと昨年、採用された。この間、大塚さん自身も同財団が催す「パワーアップセミナー」などに参加して経営感覚を磨き、06年度460万円の事業収入を07年度は690万円に増加させるなど実績を上げてきた。そうしたことも評価されたのだろう。 プロジェクトの支援は昨年9月からスタート。毎月1回、財団の経営コンサルタントが作業所に入り、職員4人と一緒に計画、実行、反省という作業が今年8月まで続いた。「勉強しながら仕事するという感じでヘトヘトになりましたが、商いというものが少しずつ分かり、きついけれど楽しかったですね。職員もかなりタフになりました」 仲間たちの月1回の営業会議も設けた。「売り上げ点検と目標設定の会議ですが、仲間たちも強くなって動くことに慣れ、販売方法のアイデアがどんどん出るようになりました」 08年度の実績は約900万円。1人月4万円まで支払えるようになった。「でも、これからが大変」と大塚さんはさらに気を引き締めている。 【問い合わせ先】まるまる屋
障がいのある仲間たちが働く喜びを求めて通う作業所。さまざまな仕事に取り組んで、社会参加を果たしているが、仲間たちの大きな願いの1つは「地域で自立して生活できる賃金」だ。
福岡市城南区七隈2-2-2 TEL&FAX 092-873-0959
通所者の賃金アップに取り組む さざなみ第2作業所 [2009年12月24日14:28更新]
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