中島孝之・前副知事逮捕の内幕(1)足元揺らぐ麻生県政 [2010年3月15日12:08更新]

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(10年2月号掲載)

福岡県町村会がある自治会館(博多区)「福岡県町村会」(会長・山本文男添田町長)を舞台とする詐欺事件は、後期高齢者医療制度の運用をめぐる贈収賄事件へと発展した。 

麻生渡知事の下、実質的に県政を取り仕切ってきた元No.2、中島孝之前副知事と大物町長、山本会長の癒着が発覚。麻生県政の足元が揺らいでいる。 

「県民不在」と言うべき県政の本質と長期政権のひずみを露呈させ、5選を目指す意向とされる麻生知事に黄色信号が灯った。

事件の背景に何があったのか。関係者の声をまとめた。
(写真=福岡県町村会がある県自治会館)



市長会との対立が事件の背景に  

調べによると中島前副知事は、06年に発足した後期高齢者医療広域連合設立準備委員会会長。副会長を務める山本会長が、全市町村が納める分担金の割合などの連合規約を、町村側に有利にするよう依頼。それに応じた中島前副知事に07年8月ごろ、謝礼として現金100万円を渡したとされる。 

「難しいヤマだった。細い一本道をたどるような作業だった」。ある捜査関係者はこう振り返る。 

発端は元々、県町村会幹部の架空請求による詐欺事件。県警は、詐欺罪で起訴された元町村会事務局次長らが前副知事に対して行っていた中洲の高級クラブでの飲食など裏金による接待の実態を捜査するうち、町村会の新たな使途不明金を発見。前副知事と山本会長との間で金銭授受があったことを突き止めた。 

では山本会長が金を渡してまで町村に有利な規約を作ろうとした理由は何か。

ある全国紙記者は市長会との激しい対立を理由に挙げる。「当時の市長会は末吉興一北九州市長や山崎広太郎福岡市長など実力者ぞろい。県内町村の“ドン”として長く君臨してきた山本会長にとっては、求心力を保つためにも、彼らとやり合って勝ったという結果を示す必要があったのでは」

仕事に関しては高い評価も・・  

県外にもその名が知られる2人だが、一体どのような人物なのか。

中島前副知事は、地方課(現・市町村支援課)歴が長く「市町村行政を知り尽くしている」(ある首長)との評価が定着。調整能力にもたけ、県議会で審議がストップするたび、中島前副知事が議員のもとに足を運ぶ姿が見られたという。

「中島さんが議員の部屋から出てきて少し経つと議会が再開、なんてこともしばしば。うまく話を付けていたんでしょう」(ある県職員)。

麻生知事も全幅の信頼を寄せた。「知事が『中島君はいつの間にか仕事を終わらせてるんだよなあ』と感心しているのを聞いたことがある」(同)。 

(続く)