[業界レポート①] かつての談合体質からの脱却を図れ 地場建設業界が入札を勝ち取るにはIT化が必須! [2012年3月2日13:18更新]

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一昔前までの談合華やかりし建設会社には、業界担当と呼ばれる公共工事専門の営業社員が、肩で風を切りながら社内を闊歩していた。本来は業界主導であった談合に、政治家が介入し始め現金が飛び交い、利権の温床となったのは言うまでもない。建設業界において余りにも激しい政治家の介入に、批判が出始めたのを機に司法が動き、全国各地で談合の摘発が行なわれ、各地の首長が次々に逮捕された。マスコミは諸悪の根源は談合とばかり、激しく非難した為に会社も堪えられず、社内の機構改革を行った。その結果ゼネコン社内から、業界担当者は他地区への転勤や、早めの退職勧告が実施され、業界担当の部署はあっけなく消滅した。九州におけるゼネコンの談合組織であった、三日会もメンバーが1人去り2人去って、櫛の歯が抜けるように退会者が続出し、今では昔を懐かしみ、OB会が年数回開かれている。

身近な談合

福岡市を走る地下鉄だが、何時東京から来たか定かでないものの、I氏と言うコンサルタントが福岡市発注の地下鉄工事窓口となり、市の幹部や議員などから紹介された業者の仕切り役を務めた。市長の側近である人物が業界の窓口となるI氏を通じ、市長に代わって天の声を発し、受注業者が決定していたのは業界の誰もが知っており、一部の人間が甘い汁を吸っていたのは事実である。その後、入札の公平化が叫ばれ始めると、裏とは言いながら堂々と行なわれていた談合は、表面的には自粛され始めた。

総合評価方式 への対応

公共工事を発注する国の出先機関や地方自治体では、談合を払拭し入札方法の公正化を目指し、指名入札から一般公募へと改められた。更に最低価格の導入などを行い、公平化を試みるも抽選の裏技が密かに行われたため、複雑な抽選方法を考え実施されてきた。そして総合評価方式にたどり着き、多くの官公庁で採用され始め、今では主流を占めるようになってきた。

しかし過去の総合評価方式を採用した入札では、評価点獲得には裏技や官製談合の噂も聞かれ、問題が発生しているのも事実だった。だから落札するには価格以外の技術提案に含まれる、配置予定技術者の工事実績や工事成績、表彰実績などの施工能力が要求され出した。昨年行われた福岡市発注の工事入札において、入札金額が低い会社もあったが、過去の実績や技術点数が高く評価された企業が、高い金額にもかかわらず落札した例もある。この総合評価方式で受注し完成させた建設会社は、次回の入札において高い評価点を獲得するのは目に見えており、利益を捻出できる価格での落札が可能になってくる。落札に失敗すると評価点が低くなり、次回に尾を引くのは必定で、落札の確率は低くなり公共工事は寡占化が進むことも考えられる。

従来の入札では他社よりも安い価格を、提示することで落札できたが、総合評価方式では他社の点数を予測し、価格を算出する非常に高度な計算が求められる。その情報を収集するのは中小建設会社にとって、非常に困難な作業になって実行するのは難しい。最近は九州でも点数予測や価格算出を専門にしている会社が誕生しており、指導を受けた中小建設会社が入札技術を導入して、公共工事の受注に成功した例が出てきた。IT化が遅れている建設業界にあって、中小の建設会社は更に遅れているのが実情で、経営者が社内で一気に進めるには余りにも危険が大きい。一時的には外部のコンサルタントなどの力を借りながら、IT化作業を徐々に進めるのが賢明と思われる。

生き残る ためのIT化

少子高齢化が進む日本の労働人口は、減少するのは統計が物語っており、特に建設業界において人材不足を解消するには、IT技術を利用することが必須となって来るだろう。慢性化した人手不足の作業を、少数精鋭で効率化するにも限度があり、社内外の様々な情報を社員間で共有することによって、臨機応変な体制作りを早急に行わないと、生き残ることは非常に困難になってくる。ITを活用することで品質の向上が出来れば、総合評価方式の要となる評価点アップに繋がる。IT化の波は建設業界に速いスピードで押し寄せており、乗り遅れると後塵を拝することになる。入札に失敗し1度負けると、逆転は不可能に近いと語る関係者もいる。社員の高齢化が進んでいる建設会社で、無理に急速なIT化を進めると、理解出来ない幹部社員がやる気を失う。長い年月をかけて築き上げた社内独自の、高い技術力の喪失につながる恐れも生じ、施工技術力の衰退を招くことも出てくるから慎重に行なうことが望まれる。

(福岡県民新聞 第62号 2012年2月15日 掲載記事 )