[記者’sEYEs] 〜政界再編〜 居直った民主党主流派 [2012年3月2日13:22更新]

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本紙、新年号で予告した通り、1月に入って政界再編に向けた動きが急ピッチで進行している。1つは石原慎太郎東京都知事が亀井静香国民新党代表、平沼赳夫立ち上がれ日本代表とともにぶち上げた新党構想だ。そしてもう1つは橋下徹大阪市長が維新の会推薦国会議員を次期総選挙で400人擁立するという構想を発表したことである。あたかも6月選挙を前提にしたような動きは何を意味しているのか。新党が告げる 新しい時代

橋下大阪市長は「次の選挙は消費税選挙と言われているが、消費税は対処療法にすぎない。次の選挙は道州制に向かう選挙になる」と語った。まさにそこに現在の動きの意味がある。いわば国の未来をいかなる方向に進めていくのかということである。

2人の問責大臣を辞めさせ、延命のために霞が関の官僚とともに歩むことを決意した、野田内閣と対抗する勢力が1つの姿を現し始めたのである。もちろん石原新党と橋下グループはただちに連携をとることはない。だが大村秀章愛知県知事や民主党を離党した松木謙公衆議院議員など、両者の接着剤になろうとするグループの動きは活発である。しかもこの背後には100人余の議員を擁する小沢一郎氏がいる。自らの裁判の終了をもって一気に動き始めるといわれている。

ドジョウ首相のお粗末な反撃

この動きに対して野田首相も手をこまねいているわけではない。内閣改造にあたって田中直紀参議院議員を防衛大臣に起用したことが野田首相なりの一手である。小沢グループの宣伝塔になりうる田中真紀子衆議院議員を小沢親衛隊から引き剥がすとともに、自らの陣営へ誘うために仙石元官房長官の入れ知恵で行った人事である。だがこの小手先細工が内閣の崩壊をさらに進めることになる。なぜなら素人防衛大臣に現在の懸案=沖縄普天間問題を解決する能力はないからだ。しかもせっかく前原政調会長が秘密裡に何度も沖縄を訪れ、仲井眞沖縄県知事と密談を重ね、積み上げてきた成果を就任早々踏みにじってしまったのだ。田中防衛大臣は辺野古移設の年内着工方針を不用意に語り、その釈明にあたって米軍との間に極秘扱いの手順表があることを明らかにしてしまった。小沢一郎氏との対抗のため、国の根幹を担う防衛大臣に無能力者をあてたことが野田ドジョウ内閣の本質であるといってよい。

年末に石原新党方針の存在を知った野田首相は藤村官房長官、仙石元官房長官らと協議、田中真紀子氏を一本釣りするために、打った手が田中直紀氏の防衛大臣起用であり、その際に安全運転で行けば乗り切れると踏んだといわれている。だがそもそも嫁の引立てで議員になった人に大臣を担わすことに無理がある。自民党の町村元幹事長は「この人事はいじめだ」と語ったが、開催中の国会はしどろもどろの答弁で醜態を晒している。

東京の政治部のデスクは、「現在の民主党の政治レベルを物語る人事。権力の保持については懸命になるが、そもそも権力を握るということが、国を運営することだという認識がない。国の運営のすべてを官僚に任せ、自分たちは与党の位置を、また民主党内では主流派の位置を守ることに汲々としているだけ。国家のレベルがどんどん下がっている」と語ったが、実態を知れば知るほど愛想が尽きるというものだ。

危機感を抱く霞が関の官僚

こうした状況の下で民主党へのテコ入れを霞が関の官僚が行うという珍現象が起きている。国家の中心にある財務省官僚と経産省官僚が密談。消費増税を実現するために民主党野田内閣を支えていくという方針で一致したというのだ。そのために、民主党、自民党内の消費増税反対派を、今後そぎ落としていくために官僚部隊が動くとなったのだ。いわば地方の反乱に対して、霞が関の官僚たちがそれを鎮圧するという構図が急速に形作られはじめた。そのためにまずは民主党政権を支えようというわけだ。政治家になった官僚OBはもちろん、過去からのつながりを持つ自民党の大物たちを使って、消費増税を何とか通すために野田内閣を支えるというのが彼らの戦略なのである。  財務省、経済産業省を中心とする官僚横断裏組織が作られ、それぞれが政治家対策を行うというのだから、彼らの危機感も並ではない。野田内閣に任せていたら霞が関が炎上してしまう。明治維新以来の世界に冠たる日本官僚組織が崩壊する、というのが彼らの考えなのだ。民主党が政権をとり、脱官僚を掲げた時も、最後は泣きついてくると言っていた官僚たちが、今回ばかりは本気になった。

いつの間にか民主党成立時に掲げていたマニフェストのほとんどを投げ捨て、さらに「現実を知ることで修正しただけ」(仙石元官房長官)などと居直っている民主党主流派。いつのまにか脱官僚から官僚依存、いや官僚の手先に成り下がってしまったのである。しかし時代を解くカギはここにある。徐々に世界は変化しつつあるのだ。民主VS自民という二大政党時代は崩壊し、中央VS地方という対立軸が作られつつある。消費税、TPPをはじめとした国家の重要政策はこの対立をさらに鮮明にしていく。  命運が尽きた野田内閣はこの狭間でヨロヨロと生きているにすぎない。次にどのような時代が来るのか、それを決定するのは実はわれわれなのである。

(福岡県民新聞 第62号 2012年2月15日 掲載記事 )