[J氏の独り言 – 紙面掲載記事] – 『暴排で悩む祇園山笠』 [2012年3月2日13:55更新]

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全国には指定暴力団が22団体存在し、その内5団体が福岡県内にあって、福岡県警は暴力団の壊滅を目指し、全国に先駆けて暴力団排除条例を施行、今では全国の自治体で暴力団に関する条例が作られている。福岡市にも指定暴力団があるものの、警察の取締りが厳しいのか、暴力団の抗争事件も起きておらず、市民は比較的静かな生活を送っており有難いことだ。

博多は町人の街として古くから栄え、町人の自治が脈々と受け継がれてきたのも事実だが、その運営に暴力団排除の御旗を掲げて、警察が指導と言う名目で介入してきた。博多を代表する祭り、祇園山笠の前には子供山笠があり、地元小中学校も積極的に参加、先生や保護者によって、明るい子供の成長を楽しみに現在も続けられている。ところが、この保護者会から暴力団を排除する動きがあり、子供の世界に大人の社会秩序を持ち込むことで、子供山笠の運営を懸念する声も聞かれる。

だが親代々から博多に住み、山笠に参加していた暴力団を排除することには、関係者は頭を痛めているのが現実との声もある。町内の自治組織は消防団や街づくり協議会、老人会に敬老会、また地域防災など、様々な組織で成り立っている。それぞれの会合が行なわれた後に、子供山笠や祇園山笠の打ち合わせもあるが、その際に暴力団関係者は退席を求められ、その結果内部がギクシャクし始めたと、対応に苦慮している町内役員もいる。

昭和41年に行なわれた町内整備で、戦後10数本あった舁き山も、現在は千代、恵比寿、土居、大黒、東、中洲、西の7つの流れに、上川端の飾り山が加わり運営されてきた。しかし都市部における住宅のドーナツ化が進み、町内に長年住んでいた人たちが郊外に移り住み、実際に山笠を動かす本町と呼ばれる町では、居住者がかつての半分にまで減少している。そこで生まれたのが周辺町内からの加勢で、それらの町は加勢町と呼ばれ、本町と連携をとりながら舁き山を動かしてきた。しかし、本町と加勢町では、山に対する責任感などに若干のずれがあり、各流れによっては運営の仕方も変わる。小さな違いがトラブルの原因になる場合もあって縦割りの世界だけに、各流れの役員は責任が重い。万一事故などが起これば責任を追及されかねず、時に気配りも大切な用件になってくる。

祭りに付きものの酒は飲酒運転撲滅運動の中で、直会もかなり厳しい制約を受けている。同時に暴力団関係者の排除を徹底的に行なえば、山笠役員が事前に行なう事務負担もかなり増えて、その心労は計り知れないと嘆く関係者も多い。 –

(福岡県民新聞 第62号 2012年2月15日 掲載記事 )