[読者のお耳役] – 歩いて佐多岬を目指す [2012年3月2日13:59更新]

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1月26日午前7時、福岡市城南区の自宅から鹿児島県の佐多岬に向けて、徒歩で出発する1人の若者を見送った。彼の名前は福島優君、福岡大学法学部3年生だ。知人の会社でアルバイトをしている、明るくユニークな人柄で、出身は東京都。

 今の若者にしては珍しく目標を持っており、警察官を目指して日頃から腕立て伏せや腹筋運動など、体力作りに励んでいる。なぜか福岡県警に強い思い入れがあるようで、そのために福岡大学に入学したというから面白い。警察官採用が決まれば、強盗や殺人犯を追う捜査一課の刑事になることが夢と、熱く語ってくれた。高校時代から目標にしていたことで、日頃読む本も鑑識や警察に関するものが多いと、自分をアピールすることも忘れてはいない。刑事は体力と根気が欠かせないため、歩くことが基本と信じ、それを生活の基盤にしているから立派だ。

だから彼のライフワークは歩いて旅をすることで、年に数回、学生の特権である時間を有効に使い、九州各地を徒歩で旅行、宮崎まで歩いて帰ってきたこともある。今年の正月にも雪が降りしきる中を、福岡から英彦山まで歩き、テントで1泊し、また歩いて帰って来たという。

今回の旅は、鹿児島県の大隅半島最南端、佐多岬までの約564㎞を、約1ヶ月かけて歩くというもので、国道3号線など幹線ではなく、出来るだけ海岸線に沿った道を歩くというものだ。ただ歩くだけではない。課題も持っていく。旅の途中で多くの人に会って話をして、行く先々の町の様子を観察してくるつもりだ。

テントと寝袋をリュックに担いで歩くのだが、携帯電話などの充電と入浴のため、数日おきに安いホテルに宿泊する。旅の費用は数人の若い経営者からの資金カンパで10数万円集まったが、出来る限り倹約して、残ったお金は東日本大震災の被災者に寄付することにしている。

出発する日の朝の気温は2度、その中を福島君は元気に鹿児島県の佐多岬を目指して、笑顔で手を振りながら歩き始めた。30日間の徒歩の旅で経験することは、今後の彼の大きな財産となるだろう。帰って来た時には、一回り大きくなった福島君を見ることが出来ると、心待ちにしている。

(福岡県民新聞 第62号 2012年2月15日 掲載記事 )