海が発する「警告」 博多湾などで異変相次ぐ [2007年8月15日13:52更新]

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(07年8月号掲載) 

博多湾(写真)や玄界灘で、従来では考えられない現象が相次いで報告されている。

玄界灘ではこのほど、サメの群れが海岸のすぐそばに出現。博多湾でも植物プランクトンが大量発生する「白潮」が春先に表面化した。湾で釣れる季節ごとの魚の種類も変化が見られる。

こうした「海の異変」は日本全国、また世界の海域で報告されており、専門家からは異常気象が原因と指摘する声も。海が発する警告は、確実に進んでいる「地球の病」をわれわれに伝えようとしている。



 海中は「すでに秋」

「海の上では夏まっさかりの暑さだが、海の中ではすでに秋のような感じだ。こんな夏は初めて」。ほぼ毎日博多湾に出船している遊漁船の船長は海面を見つめながらこう首をかしげる。

湾内で遊漁船を営む船長らによると、博多湾では季節ごとに釣れる魚が決まっているという。春先はイカナゴ、マダイ。ゴールデンウィーク明けからスズキが本格化し、ヤリイカ、アジが最盛期を迎える。夏はヒラマサ、ヤズ(ブリの幼魚)、秋から冬にかけてヒラメ、サワラといった具合だ。

季節魚といわれるこうした魚たちだが、今年は「1カ月くらい前倒しになっている」と船長らは口をそろえている。例年1月ごろにいなくなるアジゴが3月ごろまで釣れていたほか、秋口の魚とされるサワラがすでに湾内に入っている。

「白潮」と「赤潮」博多湾で異常が見られ始めたのは3月下旬ごろ。突然海の色がエメラルドグリーンに染まる現象が起きた。円石藻と呼ばれる植物プランクトンが大量発生する「赤潮」の一種だが、漁師たちは海の色から「白潮」と呼んできた。透明度が極端に低下し、漁業に影響が出たほか、海草や貝類の生育にも悪影響を及ぼすとされている。実際、アワビ、サザエの素潜り漁などに打撃を与えている。

最近では白潮現象は収まったものの、「本家」の赤潮は逆に目立ち始めた。海に出てみると、所々川の流れのように赤い筋が連なっている。赤潮は博多湾ではそれほど珍しくはないと言われるが、今年は特に目立っており範囲も広がっているという。

サメの集団が接近

今月初旬、玄界灘に「シュモクザメ」が数百匹群れているのが報道された。頭の形がトンカチに似ているため「ハンマーヘッドシャーク」と呼ばれる有名なサメで、人に危害を加えることもあるという。周辺の海水浴場などでは、遊泳禁止になるなど一時パニックになった。

このサメ、陸から約5㍍の海岸沿いで確認された。こうした現象に専門家らは「これほど近くまで接近するのは珍しい」と口をそろえている。県は周辺漁協に注意を呼びかける文書を送ったが、原因は不明だ。

しかも、このサメは志賀島そばの沖合でも確認されており、これからの海水浴シーズンを前に、博多湾近郊の海水浴場周辺の店なども戦々恐々だ。

玄界灘で沖縄の県魚「グルクン」

こうした異変は日本全国で報告されている。

沖縄の県魚として観光客らにもなじみの深い「グルクン」。この魚が3月下旬ごろ、長崎県対馬と壱岐の間で釣れた。地元漁協の話では1、2年前から長崎・五島沖で網にかかるようになったといい、沖縄に航空便で「逆送」しているという。 

数年前まで東北ではあまり見かけなかった西日本の高級魚「サワラ」が大量に水揚げされている。11年前には漁獲量のトップ3は長崎・宮崎・沖縄だったのに対し、昨年は京都・長崎・福井と日本海勢が上位を占めた。ある漁港では例年の520倍もの水揚げというから驚きだ。

フグの仲間のハリセンボンも分布域を北上させている。暖かい海を好む魚で、日本海に流れ込むと大半が冬を越せずに死亡するとされてきた。海水温の上昇が影響しているといわれる。 

一方、スケトウダラに代表される寒流系の魚の漁獲量は激減傾向にある。

異変は世界規模

世界に目を向ければ、米国・カリフォルニア州沿岸では巨大イカが異常繁殖し、話題となった。体長が最大で2㍍近くにも達する「アメリカオオアカイカ」。主に南米の太平洋側の海域に生息するとされ、北米大陸沿いではこれまでほとんど見つかってなかったが、現在は数千匹の巨大群生にまで増えてしまった。

また厳寒の地、北極圏では氷河が年に300㍍も後退しているといい、ホッキョクグマが絶滅の危機にある。 気象庁によると、日本近海の海面温度はこの100年で0.7~1.6度上昇した。特に上昇が激しいのが日本海とされ、世界平均の約3倍。現在のペースで温暖化が進めば今世紀末には海水温はさらに1~2℃上昇する可能性も指摘されている。

豊かな海の恵みを享受してきた福岡だが、何年後かには食卓を彩る魚たちがガラリと変わってしまうかもしれない。