ふくおか在宅ホスピスをすすめる会 [2012年4月13日12:12更新]

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「在宅ホスピス」という言葉を聞いたことがあるだろうか。「ホスピス」とは、がんや難病などの末期に延命治療に力を注ぐのではなく、痛みなどを緩和して、できる限りその人らしい生活を維持して最期を迎えられるようにする看護である。病院に併設された「ホスピス病棟」などかなり知られるようになった。それを在宅でやろうというのだ。

自分の人生の最期をどこで迎えたいかと問われれば、多くの人が「自宅で」と答えるに違いない。実際、ある調査では8割の人が自宅で家族に看取られながらの死を望んでいるという。しかし、現実には自宅で死を迎えられる人は12%前後しかいない。
がんや難病の末期などでは、容態が急変する可能性があり、家族では対処が難しいと思われるからだ。また、患者本人も家族に迷惑をかけたくないという思いも強く、自宅に帰りたいと言い出せない事情もある。

しかし、在宅医療に積極的な医師や病院、24時間訪問看護ステーション、さらには介護保険による在宅支援の態勢も十分ではないが徐々に整ってきた。国や自治体も医療費の高騰もあって、在宅支援の方向を強めている。患者や家族が手を伸ばせば、ある程度は望みをかなえられる状況になってきた。

これを一層進めようと活動しているのが「ふくおか在宅ホスピスをすすめる会」(代表、二ノ坂保喜医師)だ。二ノ坂医師(61)は長崎大学医学部卒業後、救急医療に携わる中で、患者の生活、家庭も見据えた医療の重要性に気づき、1996年に福岡市早良区にクリニックを開業して、在宅でのホスピスケアに力を入れてきた。

「在宅ホスピスは本当にいい仕事だと思います。末期の患者さんにとって、病気が治る訳ではありませんが、住み慣れた場所、家族に囲まれて本当に穏やかな表情になっていきます。家族も看護の負担はありますが、次第にそれを言わなくなります。ケアの力が伸ばされていくんですね。最期は悲嘆はあるものの、看取りをやり遂げた満足感といったものが感じられます」。

二ノ坂医師の在宅ホスピスの取り組みは開業前も含めて20年以上になる。その中で同じ活動をする医師や看護師、訪問看護ステーションのネットワークが広がってきた。しかし、患者側にはその情報が十分には届いていない現状から、仲間に呼びかけて2007年に「ふくおか在宅ホスピスガイドブック」を完成。そのつながりをもとに「すすめる会」を結成した。

その取り組みの中で強く感じられたのがボランティアの必要性。欧米では在宅ホスピスの大事な一員として認識されているが、わが国ではボランティアの教育システムもない。そこで福岡県にボランティア養成講座を提案。これが県の事業としてとり上げられ、07年度から県内で最初は3カ所、その後は4カ所で毎年続けられている。



【問い合わせ先】
福岡市早良区野芥4-19-34
にのさかクリニック
電話092(872)1136

福岡県民新聞第63号 2012年3月15日号 掲載