サテライトが幻に? [2012年4月13日12:23更新]

タグで検索→ |

noimage

話は東京から入った。福岡で競輪の場外車券売り場を作る話がもめているという情報だ。たしか2010年6月の西日本新聞が報じた、場外サテライト開設が遅れていることは気にかかっていた。冷泉公民館で地元説明会を実施しており、準備は着々と進んでいると思っていたからだ。開設予定場所の中洲3丁目ゲイツビルには、既に場外馬券売り場「エクセル博多」がある。だから地元、所轄警察署、消防署、議会などの反対はそれほど考えられない。むしろ土日だけでなく、平日にも開催される競輪の場外車券売り場が併設されれば、それなりに中洲の活性化にもつながるし、現在、空きフロアがあるゲイツビルそのものも、人が回遊するようになる。良い話なのだからうまくいけばいいと思っていた。早速関係各所に当たってみた。

他社資料を流用か

計画されている場外車券売り場は、売上金約36億円、利用者約28万人(当初)を見込む。健全な売り場にするため有料会員制で開設する予定だ。地元の同意が得られた段階で、整備する施設の貸し出し相手となる運営自治体(競輪事業を行う自治体、福岡県では北九州市と久留米市)を捜し、開設となる。この際のキーポイントは経済産業相の承認だ。監督機関である経済産業省に、地元の同意書などを中心とした申請書ならびに付帯資料を提出し、これが認められれば晴れて開設となる。
話題になったトラブルとは、この付帯資料の一部に他の会社が開いた説明会資料が使われているとの話だ。確かに2010年の説明会を実施したのはサテライト博多株式会社。ところが今回、経済産業省に書類を提出した申請者は株式会社ウェルビー福岡だが、サテライト博多が主催した説明会の内容そのものが付帯資料として使われていた、という噂がその根拠。
この件をサテライト博多に確認すると、開設準備を中心的に進めていた久保浩一副社長(当時)らが、2010年7月3日の取締役会で辞任し退社。その後、久保浩一氏ならびに古川芳之氏がウェルビー福岡の取締役に就任、その結果ウェルビー福岡が場外車券売り場計画に関わるようになり、その際にサテライト博多が実施した説明会の成果を我が物にしたというのである。
久保氏、古川氏ならびにウェルビー福岡は、今回の取材に対し「現在は取材に応じられない」という判断であり、真偽は確認出来ていない。だが地元説明会でのやり取りは許可条件の重要事項で、同意書が地域住民の支持のもとに交わされたことを証明するものだけに、ここで問題が出てくるようなら、許可が困難になることは避けられない。

サテライト事業のメリット

公営ギャンブル冬の時代にサテライトは儲かるのか、という話もある。競輪に至っては、全国の総売り上げは競艇を下回る8000億円弱(2008年)。地方自治体に収益金を回す余裕すら無くなっている。赤字では公営ギャンブルの意味は無いと廃止を決断する自治体も現れている。だがここにきて減少傾向に歯止めが掛かって来た。各地でサテライトが作られたことにより、場外売上が増加したからだ。このように考えると、サテライト事業そのものは将来性のある事業と言って良い。
福岡市には競艇場と場外馬券売り場はあるものの、場外車券売り場が無いためサテライト事業を考えるには格好のポイント。しかも競艇場から歩いて10分で、九州きっての歓楽街・中洲地区にある場外馬券売り場と同じ、ゲイツビルにサテライトを開設出来ればそれなりの売り上げが期待出来る。サテライト側の説明によれば、運営自治体の競輪場で開催される期間だけでなく、全国の競輪場で行われる特別競輪なども車券販売の対象となるだけに、開催日は300日におよび、事務職員、車券販売員、交通整理員、警備員、清掃員など50名以上の雇用が可能だという。これは中規模企業を1社誘致したことに等しく、現在の経済環境下では非常に大きな貢献となる。
また他の場外車券売り場では警備員が常駐するため、街の安全にも寄与し、最初はギャンブル施設ということで警戒した住民も、今ではサテライトがあるので「安心」という感想を述べる人もいるという。
試算では当初の28万人から36万人、さらに定着すれば54万人の顧客が獲得できるという。この流入人口もおろそかにはできない。しかも現在はナイター競技も行われているため、車券場から夜の中洲へというコースが人気になることは間違いないだろう。
そうしたことから考えると明らかに内輪もめといってもよい今回の話は穏便に解決されることが望まれる。だがサテライト博多は法的措置も検討し、公文書偽造と同行使などでの刑事告訴を考え、福岡県警に相談したという。またこの件が東京で話題になったのも、サテライト博多側が経済産業省に内容証明文書などを送付したため、との話もある。
3月9日には、経済産業省がウェルビー福岡から出されていた「申請書」をペンディング(一時保留)したという情報も得た。ギャンブルファン、競輪ファンが待ち望むサテライトが、こうした問題から立ち消えになることは惜しいことだ。これまで数年かけて準備を進め、実現間近にまで近づいていた計画が頓挫することは、関係者にとっても悔しい事態となるだろう。
それぞれが解決の道を考えることを、中洲連合会を中心とした関係者たちは望んでいると思うのだが。

福岡県民新聞第63号 2012年3月15日号 掲載