福博噂話 [2012年4月13日12:26更新]

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昭和の時代に「老舗」と言えば、先祖代々と言う意味合いが含まれていたが、ITの発達で生活のスピードが速くなった現在では、創業30年の歴史があれば、一般的に「老舗」と呼ばれているようだ。

福岡には戦後間もない頃に創業して、既に2代目、3代目が経営している飲食店も珍しくない。店構えも変わらず、材料や調理方法も親から子に脈々と受け継がれている店は数多い。最近は年を取ったせいか昔の味が忘れられず、時折訪れる老舗が幾つかあるが、何処の店も往年の活気を維持していくのは難しいようだ。

数10年前までは「牛の尻尾(テール)」など は、国産牛と言え安く仕入れることが出来た。ところが現在は国産の材料にこだわると、「テールやまもと」のように、テールのおでんが2500円程度になり、3品程度にアルコールが加われば、1人5000円はくだらない。最近の客は材料にこだわりながらも価格が優先し、往年の賑わいは影を潜めている。だが店主だけで落ち着いた雰囲気の店になったような気もする。

老舗と呼ばれる店は材料を吟味、調理にしても手間と時間を費やし、昔ながらの方法を頑なに守り価格は二の次で、老舗としてのこだわりを見せている。しかしその良さを理解できる客は少なくなり、老舗と呼ばれる店はいずこも苦しい経営を続けているのが実情だ。西区の老舗料亭「とり市」は、客のニーズに合わせた幾つかの店があり、仕入在庫の管理を一元化しロスを抑えることで、収益性を保っている。肝心なのは苦しければ知恵を出すことだ。

福岡県民新聞第63号 2012年3月15日号 掲載