役に立たない銀行OB [2012年4月13日13:02更新]

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消費増税と一体化した社会保障問題が国会では大きな争点になっているが、高齢化が進む日本では定年後の生活をいかに維持するかが課題となっており、官庁や大手企業は第二の職場を創設するなど頭を痛めているのが実情だ。

こうした中で、金融機関は合併で余剰人員が生まれたため、取引先企業に行員を出向させるシステムを作り上げ定着してきた。ただし銀行と一般企業ではかなりの給与格差があるため、銀行は現役行員の士気低下を防ぐ方法として、出向者にも銀行員と同額の給与支給を保証している。受け入れ側の企業はこの支給額の半分程度を負担することになるが、例えば支店長クラスを受け入れると、企業の負担は年間600万円程度のようだ。

厳しい試験を経て金融機関に就職した銀行員のレベルは高く、地元企業社員と格差があるのは当然だが、ある日突然入社して来た出向者の上司に対し、違和感と反発が生まれて両者の間の軋轢解消に頭を痛めている経営者は多い。出向者が業界の慣習などに精通していれば良いが、これまで業界特有のしきたりで処理されてきた事柄を、銀行時代の常識を持ち出されて部下が戸惑う場面も出てきている。業界を勉強する思いがあれば、古い社員も教えることをいとわないが、銀行の常識を貫き通す出来の悪い人間ほど銀行を笠に着るから始末が悪い。こうした出向者を銀行に追い返すことも出来ず、中には粗大ごみになっているから困ったものだ。

業界によっては決算の仕方も異なり、また支店長経験者だからといって財務諸表に精通した人間ばかりではない。ぬるま湯に浸かった銀行員ほど扱いにくいものはないと、散々の評価を受けている銀行OBの評判も聞く。いかに銀行でも、優秀な人間はなかなか出向させないだろうし、持て余した行員だからこそ出向させるのであって、出向を命じられた行員は一度自分の能力を見直すことが必要だろう。

経営者は銀行から融資を受けているだけに、出向者に強いことが言えず、これを任されたと勘違いした出向者が、社内を掻き回し混乱させるから怖い。経営者が銀行OBであることを信じて経理を任せていたら、借り入れだけが増え資金繰りが悪化、当事者は責任を回避するため早めに会社を去って行った例もある。

福岡銀行OBは優秀な人間が多いようで、既に300名程度が地元企業で働いており、大半のOBが役員に就任している。しかし福岡銀行が出向者の受け入れを要請してきた場合、プライドだけは高く行動が伴わず、余り会社の役に立たないOBが多いので、慎重に受け入れるのを検討するのが賢明のようだ。福岡銀行の名前に惑わされると、会社にとって大きな損失を被ることになる。それに比べ合併で名前は消えたものの、旧福岡シティ銀行OBは戻るべき場所がないことと、銀行のカラーもあって野武士のようなたくましさを持ち合わせ、出向し転籍した会社に忠誠を尽くし溶け込んで、結構活躍しているOBが多いから面白い。

福岡県民新聞第63号 2012年3月15日号 掲載