消費税軸に政界再編へ 民主も自民も残らない [2012年4月13日13:04更新]

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「維新の会」急伸におびえる既成政党、生き残りに合従連衡模索

どの党も過半数届かず
待ちの姿勢の橋下市長

橋下徹大阪市長が率いる大阪維新の会が中央政界に旋風を巻き起こしている。「維新政治塾」の公募には約3300人以上が応募し、約2200人が受講することになった。橋下氏がぶちあげた次期衆院選で「全国に300人以上を擁立し、200人以上を当選させる」という大風呂敷も現実味を帯びてきた。維新の会の急伸は、政争にあけくれ、何も決まらない今の政治への不信感そのものだ。

見捨てられる既成政党 

民主党政権は徹底的に国民の信用を失っている。だが、民主党政権の支持率低下に従って、自民党の政党支持率が上がっているわけではない。民主党の政党支持率を下回るか、ほぼ同じというのが現実だ。09年衆院選の前に、当時野党だった民主党の政党支持率が自民党を大きく上回っていた現象とは大きく異なる。
自民党の長期政権が終わり、民主党への政権交代が実現したのは、経済の低迷に政治の混乱が続き、「政治のシステム疲労が起こっている」という批判が有権者の胸にストンと落ちたからだ。ところが民主党に期待して交代させたものの、一向に「決まらない、決められない」政治は変わらない。
だから、民主党政権への失望が深まっても、「もう一度自民党にやらせてみよう」という支持が戻らない。そこに流星のごとく現れたのが「維新の会」だ。
維新の会の公約「船中八策」は政治のプロの目からみれば噴飯もの。永田町では「バカじゃないか」「これでもう維新の会もダメだ」という批評が一般的だ。しかし、クレバーな橋下徹大阪市長の狙いはむしろそこにある。既成政党から総スカンを食らうことこそ、狙いだ。郵政選挙で抵抗勢力を演出して、世論の支持を引きつけた小泉純一郎元首相と同じスタイルだ。
ベテラン衆院議員は「橋下氏は小泉氏と民主党の小沢一郎元代表をあわせたような政治家」と警戒する。わかりやすいキャッチフレーズ、物議を醸す言動、世論の反応自体をエネルギーにしていく。

維新の会 大勝は確実

維新の会は現実に国政に議席を持っていない。それゆえに現在の政治の体たらくに対しては全く責任がなく、手はきれいなままだ。だが政治はすべてそう簡単ではなく、妥協の繰り返しによって徐々に進むもの。すっぱりと割り切れるものではないが、維新の会は、少なくとも次期衆院選まではそうした現実の試練にさらされることはなく、既成政党に対しては一方的な検察官の立場に立てる。
次期衆院選が行われれば、維新の会が大勝し、相当数の議席を獲得することは確実な情勢だ。それはそのまま、民主、自民両党とも過半数をとれないことを意味する。次期衆院選後、政界がどうなるか、いまは誰にも見通せない。
こうした状況をうけ、民主、自民両党に「対維新の会」で手を組む動きがある。自民党は消費増税自体は否定しておらず、前回衆院選ではマニフェストに消費税率10%も掲げている。民主、自民が消費増税で協力する「話し合い解散」に持ち込み、選挙後、両党が消費増税実現に向けた連立を組めば、維新の会に対抗できる。
最近、今年3月、6月と言われていた衆院解散総選挙の時期の先延ばしがささやかれるのは、既成政党がこの「話し合い解散」での握手が成就するのを待っているためだ。
自民党はもちろん、早期解散を望んでいる。かといって、むやみに解散につっこめば、民主、自民とも維新の会にしてやられる。維新の会をしきりに評価している、小沢一郎元代表の動きも不気味だ。

橋下に隙なし

一方、橋下氏は焦る必要はない。これまで迷走を繰り返し、さんざん国民を失望させてきた既成政党が突然、成果を上げ出すはずもない。仮に消費増税で「話し合い解散」となれば、既成政党の談合という色も隠しようがない。いよいよ新しい希望としての維新の会の輝きが増すだけだ。
橋下氏の味方はなんといってもマスコミだ。高給でならす大阪市交通局のバス運転手に「給与4割削減」という踏み絵を突きつける。
「4割削減」というあえて物議を醸しそうなほど極端な施策を打ち出して、耳目を集める。これが最初から、実際はそこに落ち着きそうで、妥当な線の「2割削減」なら、波紋も呼ばず、実現も容易だろうが、当然、全国ニュースにはならない。
極端で一見奇矯に見えるパフォーマンスを続けること。これが橋下氏の戦術だ。そうすれば失敗しても観客は次の劇場に期待する。こうした行動を続けている限り、橋下氏が舞台から転落することはないだろう。

福岡県民新聞第63号 2012年3月15日号 掲載