田川市で最近、市議会の陸田孝則議長が話題になっているらしい。
ということで、今年1月12日に弊社が報じた記事を 加筆修正して再掲する。
政治倫理という言葉がある。
「政治家が全体の代表者として公平・公正に行動するために持たなければならない行動規範」とされ、法律に触れずとも 倫理上どうかという点で使われる。
既報の通り、田川市の㈱リクデンが 東芝インフラシステムズ㈱とのJVで 21億7千万円の電気工事を受注した1ヵ月後に、建設業法違反で県から1週間の営業停止 及び 2ヵ月間の指名停止処分を受けた。
同社の
創業者で、最大株主である陸田孝則氏は 現職の田川市議会議長である。
リクデンと陸田議長の関係について 現状をお伝えするので、政治倫理上の問題があるか、田川市民の皆さんに是非考えて頂きたい。
1.リクデンとは?
昭和46年12月、陸田孝則氏が電気工事業を目的に陸田電気として創業、同54年に㈲武孝電気工事として法人化、平成2年に株式化と同時に現商号に名称を変更した。
同15年4月、陸田氏の市議会議員当選に伴い 同氏は役員を退任、陸田実氏が代表就任、同24年に陸田和子氏が3代目の代表に就いている。
リクデンの発行株式数は900株とされ、そのうち
陸田議長は420株(46.6%)を保有する最大株主である。ちなみに 陸田実氏と陸田和子氏はそれぞれ60株ずつ保有している。
リクデンの過去5年の売上と利益、及び 主な田川市発注の工事は以下の通り。
以上の通り、田川市から毎年工事を請けていることが分かる。
令和4年7月期の工事以外は全て田川市からの元請工事、田川西中学校の電気設備工事は 元請ではないが鉄建建設㈱の下請工事として田川市の工事を間接的に請けている。
ちなみに、陸田議員(当時)は令和3年3月議会において、鉄建建設㈱との契約議案(33億6352万円)が議会で審査された際、同じ会派の3人が反対に手を挙げたにも拘わらず賛成に手を挙げている
(→ 賛否表)。
この他、田川広域水道企業団発注の工事も不定期だが受注しており、特に令和4年12月7日の入札では 前述の大口工事を落札している。
→
21億7千万円の落札についてはこちら
また、これまで 県発注の工事の受注が多かったが、最近は国立大学、大阪航空局、裁判所など 国が発注する工事にも手を伸ばしており、来期は売上が倍増しそうな勢いだ。
2.陸田議長とは?
陸田孝則議長の経歴は、
・昭和46年12月 陸田電気創業
・昭和55年4月 株式会社リクデン創業 代表取締役就任
・平成14年9月 社会福祉法人真養会創設 理事長就任
・平成15年4月 田川市市議会議員1期目当選
....... リクデンの役員退任
・平成16年4月 田川市立弓削田中学校PTA会長
・平成19年4月 田川市市議会議員2期目当選
・平成23年4月 田川市市議会議員3期目当選
・平成27年4月 田川市市議会議員4期目当選
・平成31年4月 田川市市議会議員5期目当選
・令和5年4月 田川市市議会議員6期目当選(議長就任)
前期(令和5年3月迄)の役職は、
・田川市議会建設経済委員会 委員長
・田川広域水道企業団議会 議員
・田川地区消防組合議会 議員
のほか、令和4年4月まで「田川市議会議員の政治倫理の確立に関する検証等特別委員会」の委員長を務めた。
今期は、議長の座を強運で引き寄せ、引き続き 田川広域水道企業団議会 議員を務めている。
また、市議会以外から、リクデンからの給与所得と社会福祉法人「真養会」からの役員報酬がある。
田川市の政治、建設業、福祉、学校教育など全般にわたり、尽力していることが分かった。
3.この関係で行政の監視ができるか?
田川市政治倫理条例 第3条には次の基準を遵守するよう定められている。
(1) 市民の代表者としての品位を保ち、名誉を損なうことのないよう自粛し、
地位を利用して不正の疑いの念をもたれるおそれのある一切の行為をしないこと。
(2)
市が行う請負契約、委託契約及び物品納入契約
に関し、特定の業者の推薦又は紹介をしないこと。
(7) 政治倫理基準に反する事実があるとの
疑いをもたれたときは、自ら疑いを解き、その責任を明らかにするよう努めなければならない。
また、地方自治法92条の2に「地方議員の兼業の禁止」という規定があり、建設業を営む者が市議に当選した場合、役員から退かなければならず、陸田議員(当時)もリクデンの役員から外れ、現在は陸田和子氏という方が社長に就いている。
陸田議長は役員ではないものの 最大株主で実質オーナー、それでいて社員の肩書はもったままだ。
会社の売上増のために様々な場面で努力することが想定される。
公表されている令和4年7月期のリクデンの損益計算書によると、株主配当は出ていないが、役員報酬が合計で360万円支払われていることが確認できる。
つまり、現在社長を務める陸田和子氏に支払われた金額が 最大360万円と推定される。
一方、陸田議員(当時)は リクデンから 給与として 年間720万円(月平均 60万円)を貰っており、社長の2倍の収入を得ている。
市や水道企業団の仕事を請け負う企業の実質オーナー、役員は外れているが、しっかり給与は社長の2倍の金額を受け取っており、立派な脱法行為ではないかと 関係者は指摘する。
それだけではない。
自身が理事長を務める社会福祉法人真養会から、役員報酬として年間 288万円(月平均 24万円)が理事長本人に支払われているという。
真養会が行っている福祉事業には、もちろん田川市の税金が投入されており、その中から 陸田議長に報酬が出ていることになる。
事実であれば かなり問題と言えるのではなかろうか。
いずれにしても 陸田議長は 月額 47万6000円の 議員(議長)報酬の他、リクデンから給与として 月平均 60万円、社会福祉法人真養会から 月平均 24万円の兼業収入を得ている 裕福な方ということが判った。
まとめると、
・陸田氏は、今期は市議会議長、前期は 建設工事関連を所管する「建設経済委員会」の委員長、更に「田川広域水道企業団議会」の議員を務めており、行政の監視をする役割がある。
・陸田氏が最大株主であるリクデンは、田川市や田川広域水道企業団の工事を毎年受注し、特に昨年度は 21億7千万円の工事を1者入札で落札している。
・その売上の中から陸田議員に 年間720万円の給与が支払われている。
・社会福祉法人真養会から理事長報酬として 年間288万円が支払われているが、田川市はその事業に支出している。
・この関係で 果たして行政の監視ができるか。
田川市政治倫理審査会は、毎年市議の資産報告をチェックしているはずだが、おそらくこの点については議論になっていないと思われる。
4.疑問をぶつけてみよう
令和4年4月27日、陸田議員(当時)が 「田川市議会議員の政治倫理の確立に関する検証等特別委員会」の委員長として政治倫理についての発言をしている。
議場で25分間に亘り演説を繰り広げ、他の議員がいかに政治倫理というものを理解していないか 徹底的に非難しながら以下のように述べた。
(委員会の動画は →
こちら)
「敢えて申し上げますが、
倫理とは善悪を判断する根本である人の守るべき道理、人が行動する際の規範となるもので、このことから政治倫理とは市政が市民の厳粛な信託によるものであることを深く認識した上で、
我々議員が政治的にも道義的にも批判を受けることのないよう身を律しなければならない。」
これを聞いて安心した。
次の様な疑問が市民から出ている。
本来なら 政治倫理審査会が聴くべきことだが…
- リクデンの役員を退任した理由は何ですか?
- 役員を退任しても最大株主ですが、それは問題ないのですか?
- リクデンからの年間支払われる給与の額は?
- 市議とリクデン社員と真養会理事長とを兼ねていますが、それぞれの業務内容と勤務体制は?
- 建設経済委員会の委員長や水道議会議員の立場で、市や水道企業団から仕事を貰っていますが、政治倫理上の問題はないと思いますか?
- 浄水場の電気工事の入札は、東芝インフラシステムズJVの1者のみ参加、21億7千万円で落札に成功しました。企業団議員として、最大株主として、このようなことが許されるとお考えですか?
- 陸田議員は、田川西中建設工事における鉄建建設との契約議案に賛成をしています。その下請にリクデンがちゃっかり入っていますが、政治倫理上の問題はないと思いますか。
- また、初めから鉄建の下請に入ることが決まっていたという指摘もありますが、それは事実ですか。
- 真養会から報酬は年間いくら貰っていますか?
- 社会福祉法人の現況報告書(→こちら)で、殆どの法人が理事長報酬を公開しているのに、なぜ真養会は公開しないのですか?
- 真養会の運営に市から負担金を支出していますが、市議が報酬をもらいながら理事長を務めていることについて政治倫理上の問題はないと思いますか?
- 西保育園の民営化にも手を挙げる予定ですか?
「道義的に批判を受けることのないよう身を律しなければならない」とおっしゃっているので、直接疑問をぶつけてみることをお薦めする。
特に現在は 議長という要職にあられるので、いつでも どなたにでも、快くお答え頂けるものと確信している。