地権者会は解散、町長も「計画は白紙」(2) [2007年11月29日12:10更新]

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計画の「復活」はありえない

こうした事情もあって、総会での決定はすっきりとした形ではなく、今後の状況が変化すればテーマパーク構想が再浮上する余地があるとも取れるものとなった。

そのためか、地権者会の方針決定を報じたマスコミ各社にも捉え方に温度差があったようで、計画継続に含みを残すかのような表現を用いた社もあった。

日本トレイドの山崎和則社長の「会からPSJの名称がなくなるだけで、実現の可能性はまだ残っていると理解している」との発言も、地権者会そのものが消滅するわけではないことを踏まえたものといえる。



その意味では、土地の貸借契約期限切れを目前に伊藤博翌氏(ジャパン福岡・ペプシコーラ販売社長)を前面に押し出して期待感を持たせ、地権者を接待して懐柔を図るなど、山崎氏の「作戦」は一定の効果を挙げた―と言えるのかもしれない。

だが、冷静に考えてみれば可能性は残されていないことは容易にわかる。

9月末に日トレ社・地権者会間で結ばれた土地の賃貸契約が切れた段階で、事実上、各地権者が自分の所有する土地を自由に売買できる状態となり、それは現在も変わっていない。予定地の一部が売却され「虫食い状態」になってしまえば、広大な土地を必要とするテーマパークなど建設できるはずもない。そんな状態にもかかわらず、数百億単位の資金を出そうという物好きな企業やファンドが今後新たに現れる―と考える方にムリがある。

「詐欺ではないか」

「地権者会解散決定」の報を受け、一部の関係者からは「やっぱり・・」と、落胆とも怒りともつかぬ声が上がっている。  

「これははっきり言って詐欺ですよ」。こう語るのは、日トレ社の未公開株を購入したある出資者。「まったく期待してなかったとはいわないが、もともと怪しいとは思っていた。(地権者会の解散で)とうとう馬脚を現したな、という感じですよ」。  

日トレ社の未公開株をめぐっては、本紙はすでに「人間と産業開発研究所」(H&M研究所、倉原忠夫社長)のセミナーなどで推奨され、購入者から「だまされた」との声が上がっていることを報じた。H&Mは日トレ社の大口出資者であるが、同社を相手取り、損害賠償を求め民事訴訟を起こす動きが全国で出てきている。  

名古屋地裁では「『近く上場する、値上がり確実の未公開株』と宣伝されて出資したのに、実際には上場せずに資金をだまし取られた」として、愛知、岐阜、長野など1府6県の27人と8社が、倉原氏らを相手取り、総額約5億3000万円の損害賠償を求める訴訟を起こした。

H&Mが、日トレ社の未公開株を会員や一般投資家に売りつけた手口がまさにこれだ。倉原氏はこれまでに、数々の企業の未公開株を「上場すれば何百倍にもなる。今が買い時」などとして売っており、同社を相手取った訴訟は福岡、鹿児島地裁でも起こされている。日トレ社の未公開株をめぐっても、同様の動きが出てくることは間違いないだろう。

マスコミも「事件」想定し取材

テーマパーク構想を報じる多くのマスコミはこれまで、少なくとも表面上は、冷静に事態の推移を見守ってきた。だが、一部民放が地権者会の総会直前に「ライセンス供与を行うパラマウント社と日トレ社の契約が、すでに2006年初めに切れていた。このためパラマウントの名前を使った事業そのものに実現性がなかった」と報じた。  

仮に刑事事件として詐欺罪を適用するとなると、山崎氏ら関係者が、ある時点で事業の実現は不可能と認識し、それにもかかわらず事実を隠して金を集めた―ということを立証する必要がある。民放の報道は、パラマウント社との契約切れの問題はこの点と密接に絡んでくるのではないか、と指摘しているわけだ。すでに一部の記者らが「日トレ社が出資金を集めた行為は詐欺罪に当たる可能性がある」と水面下で取材を進めていたが、今回の「契約切れ報道」で、取材合戦に火がつきそうな雲行きである。  

パラマウントテーマパーク計画には山崎氏やH&Mをはじめ、多くの人物が関与している。一方、出資者も相当数に上るとみられ、関係者の責任があらためて問われることは確実だ。マスコミなどによる追及はまさにこれから本格化するわけだが、彼らの行為の裏側にどんな事実が隠されているのか明らかになる日が来るのは、そう遠くないかもしれない。