福博噂話 [2012年7月18日16:30更新]

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中央区の天神プレイス1階に、新しく「BROT LAND」というパン屋がオープンしていた。持ち前の野次馬根性から車を止めて覗いてみると、店内には焼きたての美味しいパンの匂いが漂っている。すると突然名前を呼ばれ、一瞬わからなかったが、作業着姿の若い男性は、数ヶ月前まで福岡の老舗菓子舗、千鳥饅頭総本舗の原田健生社長だったから改めて驚いた。千鳥饅頭総本舗の社長を辞任して、同社のパン部門を独立させたと言うではないか。

父親が病死してから、若くして老舗菓子舗の社長になり、福博財界の会合などで度々会っていた。だが今度はその様変わりした姿に加えて、「零細企業は社長が陣頭指揮で働かないと潰れます」との立派な答えが返ってきたから3度目の驚きだった。

昔の話になるが、祖母の遺産相続で父親を含む兄妹7人が争い、裁判沙汰になっていた話は、余りにも有名。今回同氏は独立した経緯を何も語らなかったが、社長が辞任し別会社で独立するのは、余りにも不自然な話。例え空スペースだったにしろ、貸したオーナーが事情を知っているはずと、聞きに行くとかなりの好条件であった。独立するには資金が必要だが、彼の人柄を信じて物心両面に亘って、多くの人が何らかの応援をしている。

若くして人の情けを知った原田社長が、恩義に報いるため、身を粉にして働いている理由を知らされた。暗いニュースが多い中で、久し振りに爽やかな話を聞き、博多の人情はまだ生きていると、他人事ながら嬉しくなった。