高島市長 就任2年 その成果は? 滑舌とパフォーマンスだけは立派だが…。 [2012年12月17日15:22更新]

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就任から間もなく2年を迎え、折り返し点が近づいた高島宗一郎・福岡市長。九州一の政令市で格段に若いトップの登場は驚きと期待をもって迎えられたが、その後は耳目を集めるだけのパフォーマンス会見にあけくれ、さしたる成果もみられない。それどころか、厳しい財政事情から2代にわたって続けられた市長給与カットをこっそりと廃止したことをはじめ、自ら導入した2階建てバスの市費負担増などが次々と明らかになる中、幹部職員との意思疎通の欠如など綻びもあらわになりつつある。刷新を期待された市長は、むしろ政治家としての資質を問われる事態となっている。

あらわになるつまづきの数々

一連のつまづきが現れ始めたのは9月下旬。高島市長は、7月に自ら打ち上げた中国人公務員の研修受け入れ中止を表明した。尖閣諸島を巡る日中関係の悪化が理由だが、元はといえば「年間800人」「経済効果は5億円」と、部局も想定していなかった数値目標を強引にひねり出させるなど無理な演出で誇大にアピールしたのが裏目に出た。  直後の9月末には、アイドルグループ「AKB48」のメンバーとタイアップして立ち上げた仮想区「カワイイ区」事業で、公募・入札もせずに特別住民票(300円)のインターネット予約・発送業務をRKBに委託。同社が市に無断で「カワイイ区」ロゴを使用していたことが判明した。300円の住民票は、同社の予約では専用ケースつきで888円で販売された。市はうまい具合に民間の商売に利用されたわけだ。事業自体も、アイドル側が指定した広告代理店の見積り通りに費用1000万円を負担。市長の思いつき施策は、ここでも随所にずさんさを見せた。

「報道を見て知った」

10月には、やはり市長肝いりの2階建てバス事業でも不手際が発覚。あて込んでいた国交付金が「民間の収益事業にあたる」として支給されないことが市議会の質疑で判明した。バス2台の購入費は2億1000万円。このうち運行事業者の西鉄が負担するのは3割の6200万円で、あとの7割、1億4800万円は丸ごと市が負担するはめになった。しかも国が不支給を通知したのは昨秋。なんと1年近くも市は事実を公表していなかった。  この話には付録がつく。同月末、記者会見で高島市長は「報道を見て知った」と発言したのである。国からの通知時点と市議会の質疑後、いずれも幹部を含む事務方は市長に報告していなかったことになる。市長が知らされないまま、予算執行に関する重要事項が進められていたわけで、組織の危機管理面からしても通常考えられない事態だといっていい。

こっそり昇給

この問題と前後して、高島氏の浅薄さ、政治音痴ぶりを如実に示す事実も発覚している。財政難から、山崎広太郎市長時代(2004年)から2代続けられていた市長ら特別職給与の減額措置が密かに廃止されていたのだ。  正確に言えば、市長給与カット(10%)は当初2年間の時限措置として条例化され、06、08、10年(この時は期限1年間)と延長を重ねてきた。7年間継続された措置の削減効果は4億2000万円に上るのだが、高島市長はそれを延長せず、2011年度は給与満額1716万円を手にした。事実上の〝昇給〟である。  財政難が改善されたわけではない。市は現在も、市民負担につながる来年度以降の行政改革案を検討中だ。ではなぜか。当初は「全力で市政運営にあたることで責任を果たそうと思った」と腑に落ちない説明をした高島市長は、10月末に再度記者会見し、「(減額措置は)当時の市長の政治判断で行ったもので期限が切れて元に戻った」と釈明。さらに、前任者2人が条例改正によって措置を延長した経緯を「知らなかった」と述べた。  ここでも「知らなかった」である。市長の足を引っ張る勢力が市役所内にいるのでは、と勘ぐりたくなるほどだ。野党議員の間からは「市長の無能をいいことに、行革が職員の給与カットに及ばないよう、まず市長給与を上げたのだ」とうがった囁きも漏れている。

大変な財政難なのに

なぜこれが大きな問題になったかといえば、深刻な財政難が依然続いているためだ。言い替えれば、「高島氏の思いつき・パフォーマンス」が次々と挫折しているばかりでなく、市長本来の職責である行政運営が早くも行き詰まりを見せているといっていい。  一つの証左が、2013〜16年度の財源不足(赤字)は851億円に上るという市の試算。この財政難解消のため市は現在、補助金や住民サービスなど81項目に及ぶ事業見直しの検討を公表しているのだ。検討項目の主なものを挙げれば、私立小中高校への補助金カット、市立幼稚園廃園、市営渡船の減便など。「都市を成長させるには、やめるものはやめないと」とは高島市長の弁だが、これら市民サービスを削って成長する都市とはどんな姿をしているのか。

深刻な意思疎通の欠如と政治音痴

深刻な財政難の中、フリップを使った派手な記者会見の陰で露呈したつまづきやお手盛りの数々を見ていくと、二つの共通項があるのに気づく。しばしば高島市長は重要事項を知らされず(あるいは知ろうとせず)、しかもそれを会見の席などでいとも簡単に「知らなかった」と言い訳する(あるいは開き直る)のだ。  前者は組織内コミュニケーションの不在、意思疎通の欠如を、後者は危機管理意識の低さと政治的センスの欠如を示す。  「幹部職員や議員と酒でも飲んで意見交換? まさか。彼はいつも同年代の遊び仲間と合コンだよ」と漏らした与党議員のつぶやきを思い出す。  グランドデザインもなく、その場その場の思いつきに飛びついては失敗を繰り返す1年生市長。この2年間を肥やしに後半こそはと期待したいところだが、折り返し点を前にもはや高島市政の底は割れたといっていいだろう。