行政の支援やNPO団体の活動で減少するホームレス 非正規拡大や不況長期化で増加の懸念も [2013年2月19日16:33更新]

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失業などによって路上生活を余儀なくされた人、ホームレスが近年、目立って減少している。以前は福岡市内のちょっと大きな公園には、ブルーシートの仮小屋がよく見られたものだが、最近ではほとんど目にしない。厚生労働省の調査では、全国ではこの4年ほどで4割減、福岡市では4分の1以下に減ったという。行政の支援強化や民間の支援団体の活動が功を奏しているといえるが、問題が解決したわけではない。最近は、以前は見かけなかった20〜30代も散見されるという。非正規労働が広がり、不況が長期化する中、今後もホームレスに陥る人が続く懸念がある。
福岡市のホームレス4年で4分の1に

厚生労働省は毎年4月、その年の1月に調査したホームレスの実態を発表している。昨年4月の発表では、全国のホームレス数は2008年の1万6018人から毎年減少して、昨年4月の発表では9576人と初めて1万人を切った。九州では突出して多い福岡市は、09年の969人をピークに昨年は226人と4分の1以下にまで減少したという。
これはホームレス自立支援法などによる行政の支援や生活保護適用の緩和、また民間の支援団体による焚き出しや相談活動によって、多くのホームレスが就労やアパート入居などができるようになったからだ。
国や地方自治体がホームレス対策に力を入れるようになったのは、2002年のホームレス支援法の制定からだ。九州各地から職を求めて人が集まる福岡市は、必然的にホームレス化する人も多く、地域住民との摩擦も生じていた。そこで同市は、04年に自立支援の実施計画を策定。救護施設を活用した生活保護の適用や民間のNPO団体との協働で自立支援を行うのだが、ホームレスの増加は止まらない。03年の607人からリーマンショック後の09年には969人にまで増加した。
そのため同市では、09年に第2次自立支援計画を策定。市が委託した専門相談員が駅や公園など市内全域を巡回する巡回相談事業や、宿泊機能を持つ就労自立支援センターの設立(09年11月、定員50人)など、支援活動を強化した。また、同年3月からは住居がない人にも生活保護を適用できるよう運用を緩和した。

活発な民間の支援活動

こうした支援策を強く後押ししたのは、長年にわたって焚き出しや相談活動などを続けてきた民間の支援団体だ。1996年に発足した「福岡おにぎりの会」(04年、NPO法人)は博多区美野島2丁目のカトリック教会美野島司牧センターを拠点に、4〜11月は毎月第1金曜、12〜3月は毎週金曜の夜、おにぎりやパン、生活必需品を携えての夜回りを欠かさない。同会はこのほか、生活相談や自立した人の居宅訪問、生活保護申請、法律相談、就労支援、行政との交渉・協働事業など幅広い活動を行ってきた。
同会専務理事の近藤浩久さんは「夜回りは現在、天神や博多駅周辺など都心を中心に12コースを50人前後のボランティアで回っています。確かに一定程度の減少は見せていますが、ホームレスになる状況は続いています。支援は今後も必要です」と語る。
02年、おにぎりの会から派生した「美野島めぐみの家」(09年、NPO法人)は前述の美野島司牧センターを会場に毎週火曜日、暖かいご飯とカレーなど副食の焚き出しと、衣類や生活必需品の配布を行っている。暖かい食事をテーブルについて落ち着いて食べられるこの焚き出しは、ホームレスの人たちにとっては貴重な機会。同じ境遇の人たちが触れ合う場にもなっている。
理事長の瀬戸紀子さんは「ホームレスの人たちは情報を得る手段を持っていません。ここに来るのもほとんど口コミですね。鹿児島や大分から来た人もいます。三日も食べていないとか。普通に仕事をしていたのに失業した途端、住む所もなくなってしまったという話を聞くと、私たちと路上生活は大変近いところにいると感じます。数は確かに減ってきたのですが、最近、以前は見かけなかった20〜30代の若い人が増えてきたのは気にかかりますね」と語る。
住居を提供して就労支援を行う民間施設も設立されている。東区多の津5丁目に10年5月開館した「抱樸館(ほうぼくかん)福岡」。生活共同組合グリーンコープが母体となった社会福祉法人グリーンコープが21年の活動実績を持つNPO法人北九州ホームレス支援機構の協力を得て設立した。
定員81人で全個室。入居期間は原則6か月で、入居時に生活保護を申請して生活基盤を整え、その後、健康回復や就労のための職業訓練など自立のためのプログラムが用意されている。就労後は地域の居宅へ移行する。障がいのある人や高齢で働けない人には、手帳の取得や介護申請も支援している。
こうした支援体制の整備で数は減少してきているが、懸念されるのはホームレス化が避けられない社会状況だ。非正規労働が広がり、不況の長期化で出口が見えない。さらに、未婚率が男女とも増えているのも懸念材料だ。支えてくれる家族を持たない人が増えているのだ。支援活動を途切れさすわけにはいかない。

【問い合わせ先】
福岡市博多区役所保護3課  ℡092(419)1113
「福岡おにぎりの会」 ℡ 092(431)5785
「美野島めぐみの家」 ℡ 080-6439-3294
「抱樸館福岡」 ℡ 092(624)7771