本紙主催の賀詞交歓会記念講演より 関家具社長 関 文彦氏(10年2月号掲載)
厳しい時こそチャンス。昔は、うちのような会社なんて見向きもされず、若い人になかなか入社してもらえず往生しました。ところが今はたくさんの優秀な人材がうちを希望してくれる。こんないい時代はありませんよ。 若い人たちに囲まれているせいでしょうか、この歳になっても一向に体力、気力とも衰えた感じがしません。ありがたいことですね。 家具というのは実に魅力的な商品です。 人生の節目節目に、家具は必ず立ち会います。赤ちゃんが産まれたらベビーベッド、小学校に上がれば学習机。結婚する時には婚礼家具が必要ですし、家を建てれば新しい家具と、とにかくおめでたい時の必需品なんですね。 私たちの家具が、お客様の幸せな瞬間を演出するために一役買う。このことは社員にいつも言ってるんですが、ですから家具産業は「寿産業」なんですよ。 「家具は人を作る」。私が好きな言葉です。お客様の生活を長期間支えるというだけではありません。例えばテーブルに残った傷を見て「あの時、親父に怒られたなあ」なんて、昔を思い出したりする。人生の節目に立ち会い、記憶を彩る。 こんな素晴らしい、人に喜ばれる商品を扱えることが本当に楽しく、また嬉しく思っています。 私の父が木工所を経営していた関係で、5歳くらいのころから仕事を手伝っておりました。まだ戦後間もないころで、子どもでも働くのが当たり前。仕事の合間に学校に行ってるような感じでしたね。 うちで作った家具を運ぶトラックに乗り込んで、あちこちに行きました。当時は今と違ってトラックの燃料は木炭。ですから運転手とは別に助手が必要なんですね。 遠いところでは山口の長府(下関市)まで行きました。国道トンネルも橋もまだなかった時代で、関門海峡を渡るフェリーは両側に外輪が付いた蒸気船。今でもよく覚えています。 実は私、野球少年でした。子どもの頃の夢は甲子園へ行くことでしたが、学生時代には叶わなかった。それがある時、柳川高校のPTA会長に推されたんです。そんな気は毛頭なかったんですがふと考えて、甲子園に行けるならやる、と(笑)。 めでたく1995年に出場できまして3回戦まで進んだんです。夢が叶いました(笑)。 1968年に大学を卒業しましたが家は継がず、トラックを1台買って新しい会社を立ち上げました。オリジナルの家具を企画、デザインし、出来上がった商品をトラックに積んで配達する。一から十まですべて1人でやりました。 1年後には結婚し、家内に事務関係の仕事を任せました。とにかく1人で何役もこなさなければならない。商品開発や銀行折衝、配達。ですので家内には本当に感謝しています。 私の自慢は創業以来42年、1期も赤字がないこと。そのコツは「日次決算」。毎日数字を出して損益を把握、検証する。これはとても大事なことです。それから法人化するまでの14年間は現金決済を貫きました。 まずは信用を得るのが大事と考えたのですが、父が手形に追い回されて苦労する姿を見ていたせいもありますね。 今でも私は16時間労働。経営者は労働基準法の対象外(笑)。そのためには健康管理が不可欠で、今でも毎朝腕立て伏せやスクワットを欠かさない。おかげで体重やスタイルは20歳のころからずっと変わりません。 私の趣味は世界旅行、それも辺境を旅するのが好きなんです。いろんな風景を見たり異国の文化に触れたりするのは勉強、刺激になる。社員もできるだけ海外に出すようにしています。 ですが一番好きなのはやはり日本、そして私を育ててくれた故郷の大川です。筑後川に有明海。蒸気機関車が走り、その向こうには雲仙岳を望む。昔の光景が今でも目に浮かびます。 小学校3年生のころのことです。ドッジボールをしていた時、先生がほめてくれた。相手の攻撃の時に防御の姿勢で逃げる、それがいい、と。小さなことですがとても嬉しくて、それからです、何にでも自信を持って取り組めるようになったのは。 そんな思い出も経験もすべて故郷が与えてくれた。そう考えると、大川で働き、大川に貢献できて幸せですね。 失敗してもくよくよせず、あの時の先生のように社員をほめてほめて。みんなで明るく楽しく─それが私の、仕事に対する心得です。 【関 文彦】 <せき・ふみひこ> ★本紙があらためて取材、再構成しています
みなさんが厳しい厳しいと言われる今の時代。ですがおかげさまで私どもはお客様により良い家具をお届けするために、平均年齢28歳、160人を超える若い社員とともに毎日頑張らせていただいております。
1942年、大川市生(67歳) 同市在住
68年、福大商学部卒 同年、「関家具」創業
82年、株式会社「関家具」代表取締役就任
日本家具経済同友会員、九州山口経済人クラブ会員、
大川商工会議所常議員
【お耳拝借!】家具を愛し 故郷を愛し [2010年3月29日13:23更新]
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家具は人を育てる
仕事の合間に学校へ
創業以来42年赤字なし
故郷の大川に感謝