(11年6月号掲載) 福岡市の南北を結ぶ大動脈、日赤通り。福岡日赤病院の斜め向かいに、桜の大木が枝を広げる庭を持ったレストランがあるのをご存じだろうか。 昼時ともなると、近隣の企業の社員や病院の職員、地域の住民らが大勢ランチを食べに集まってくる。ビルに囲まれた都会のオアシスといった雰囲気である。 ここは精神障がいのある人たちが働く通所施設「みらい」(南区大楠)。冒頭に紹介したレストランや売店の接客業務、菓子工房でのお菓子やパン作り、地域の病院から洗濯物を預かるクリーニング業務などに、毎日25~30人(利用登録者70人)が従事する。 「精神障がいのある人は人付き合いが苦手な人も多く、就職しても職場の人間関係がうまく築けなくて長続きしないケースも多いんです。ここでは利用者の方にやりたい作業を選んでもらって、無理のない形でいろいろな仕事を経験することができます。 初めはしり込みしていても、時間が経つにつれて、新しい仕事や接客などにも挑戦してみようという気持ちが芽生えてくる人も多くいます。こうして、社会で生きていく力をつけてもらえたら-という思いで支援しています」と施設長の山口洋子さん。 「みらい」は福岡市で初めての精神障がい者通所授産施設で03年にオープンした。母体は「しののめ共同作業所」(城南区)と市内の共同作業所が協力して同年に設立した社会福祉法人「福岡あけぼの会」(有吉時寛理事長)である。ちなみに同作業所は1987年に誕生した、福岡市における精神障がい者とその家族による小規模作業所の草分けだという。 こうした歴史で分かるように、身体障がいなど他の障がい者施設に比べて、精神障がい者施設の普及ペースはかなり遅い。というのも、精神障がいが身体障がいなどと同等の障がいとして法律的に認知されたのが93年の障害者基本法の制定から。以後も精神障がい者への施策はわずかなものにとどまったという。 何とかしなければと市内の共同作業所や家族、支援者たちが立ち上げたのが福岡あけぼの会。この地は元々、市の児童相談所跡地で、後継施設が検討されていたが、福岡市の中心部に施設をと願っていた同会の熱心な要請で貸与されることになったという。 現在、ここには法人本部と通所施設の「みらい」、それに在宅障がい者の支援を行ったり、相談に応じる地域活動支援センター「心の春 希望」がある。 「ここから一般企業などに就職して巣立っていった人は何人もいます。しかし、職場や地域で問題にぶつかることも数々あります。相談を受けたり、企業の経営者や上司の方と話し合ったり、そんなサポートも重要な仕事です」(山口さん)。 オープンして8年目。地域ともすっかりなじみになった。「ここ大楠校区の夏祭りや大楠公民館のバザーには必ず呼んでもらっていますし、地域の方にはボランティアとして手助けしていただいています」(同)。 施設の会議室は民生委員の会議やコーラスグループの練習場として開放するなど、地域との交流も深めているという。 【問い合わせ先】
福岡市南区大楠1-35-17 ℡092-524-4121
福岡あけぼの会HPはこちら
都会のオアシスの役割も 精神障がい通所施設「みらい」 [2011年7月5日12:13更新]
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