「著作を無断使用」研究員が二丈町に抗議 水販売業者HP [2008年8月19日09:23更新]

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 (08年8月号掲載)

二丈町役場二丈町(筒井秀来町長)が出資する第3セクター「リフレッシュ二丈」(内場賢太郎社長=副町長)。ここが運営する温泉施設で始めた天然水の販売事業をめぐり、ある大学関係者が「町の水を販売している業者のHPで、自分の著作物が勝手に宣伝目的で使われ、多くの人に誤解を与えた」と二丈町に抗議している。

町は「3セクと販売契約を結んだ民間業者がやっていることで、当方は管理・指導する立場にない。町への抗議は筋違い」と回答したが、大学関係者は「研究者としての名誉を著しく傷付けられた」と、法的措置も辞さない構え。

ラドンを含み「健康にいい」と県内外で評判の二丈町の水だが、問題はこじれそうな雲行きだ。
(写真=二丈町役場)



アトピーやガン細胞抑制に効力

二丈町に抗議しているのは、東京理科大薬学部客員研究員、高橋希之氏。

高橋氏によると、この著作物は論文の要約「低濃度ラドンによるマウスのアトピー性皮膚炎とガン転移抑制」など。町に湧き出す「万蔵鉱泉」の源泉水を使ってマウス実験を行ったところ、アトピー性皮膚炎の進行が顕著に遅くなったり、ガン細胞の肺転移が抑制されるなどの効果が明らかに。論文は06年に学会で発表、米専門誌にも掲載された。

これをHPに掲載したのはA社(福岡市)。同社が販売する「二丈の天然ラドン水」の効能に関する参考文献として全文を載せた。

高橋氏がこの事実に気付いたのは今年6月中旬。実験に使ったのはこの水ではなく、また著作物の掲載を許可したこともなかった。

地元関係者らに問い合わせるなどした直後、問題部分が削除された形で、HPが全面的に差し替わっていた。このため高橋氏は7月、二丈町に抗議文を送った。

論文は誰が 使ってもいい・・!?

二丈町によると、リフレッシュ二丈は同町が取水権を持つ天然水を使った温泉施設「きららの湯」(03年オープン)の指定管理者。

原油価格高騰で経営が厳しい状況となり、リフレッシュ二丈は昨年からきららの湯の駐車場にコイン給水器を設置し、販売事業に乗り出した。その後、A社から「水を分けてほしい」と申し出があったため4月に販売契約を結び、最近、二丈の天然ラドン水として販売を開始した。

A社は「高橋氏から連絡がないので何とも言えないが、HPが切り替わったのは業者に新規製作を依頼していたのがアップされただけで、時期は偶然。中身をねつ造していたら問題だが、公にされた論文は誰が使ってもいいはずだ」と話す。

さらに「文書は共著者の別の先生から『人のために役に立つなら』といただいた」と説明するが、文書を渡した共同研究者は「文章の掲載を許可したことはない」と話している。

「本家」を意識した?

nijo2P-3C.jpg多くの人が立ち寄り、コイン給水器からポリタンクに水を入れている。同町深江のマンション敷地内にある万蔵鉱泉「希望の水」(写真)。高橋氏が調べたのはこの水で、研究結果はマスコミで大きく取り上げられ、求める人が増加した。

実はきららの湯、そして二丈の天然ラドン水の源泉はここから数十㍍しか離れていない。「ですが、私が実験に使ったのはあくまで万蔵鉱泉の源泉水であって、場所は近くても水源はまったく別です」(高橋氏)。

A社HPの問題点は著作物が無断掲載されただけではない、と高橋氏は指摘する。万蔵鉱泉という名称は「万蔵の下」という昔の地名に由来。

一方、HPにも「万蔵鉱泉」と書かれ、採水地は「糸島郡万蔵の下」とあった。だがこの場所の元の地名は「深江字柳川」。万蔵鉱泉との表記は現在、HP上では削除されている。

高橋氏は「私の著作物を利用するために、二丈の天然ラドン水と万蔵鉱泉水が同一であると誤解させるような、偽った表記をしたのでは」と話す。これに対しA社は「水源は同じで、何の問題もない」と主張する。 

二丈町の監督責任は

高橋氏の抗議について、内場副町長は「正直、困惑している。著作物を無断で使ったとしたら、あってはならないことだが、民間業者の話で筋違いだ。高橋氏にはその旨の回答を7月末、文書で送った」と答えた。

きららの湯に関する条例は「町長は施設の管理の適正化を図るため、指定管理者に対し管理業務および経理の状況に関し(中略)報告を求め、調査し、または指示することができる」(第10条)と定めている。A社は指定管理者ではなく、指導・調査の対象にならない、という。

だが、8月上旬、きららの湯では入口にコイン販売の水と天燃ラドン水のチラシを並べ、高橋氏の研究成果について報じた新聞2紙の記事コピーを張って大きく宣伝していた。

きららの湯に置かれた天然ラドン水のチラシ 

また、A社が最近新聞に折り込んだチラシには、参考文献として高橋氏の著作の題名だけが記述されている。採水地を「万蔵の下」としているチラシもある。

高橋氏は「盗用によって著作権の侵害と、私が自発的に水の効能を宣伝しているとの誤解が生じた。A社、そしてリフレッシュ二丈のこうした姿勢に、町は監督責任があるはず」と憤慨、法的措置も検討している。