(08年7月号掲載) 死亡から4年後の今年6月、やっと町の福祉基金へと計上されたのだが、後見人は「これまで何の説明もない」などと町の姿勢を批判。また一部町民からは「遺贈金を誰かが横領したのではないか」との"疑惑の眼差し"が向けられ、「遺産を保全せず、職務を怠った」として訴訟が起こされる事態となっている。 同町は「横領などありえない」としているが、市民の善意が長期間に渡って宙に浮いていたのは事実。本来であれば、町民にとっても喜ばしい話であるはずなのだが・・。遺贈金の扱いをめぐって生じた当事者間の感情のもつれは、当分収まりそうにない。 「これまで町から何の連絡もなかった。どうしてなのか分かりません」。森岡路子さん(熊本県八代市)は、篠栗町の不可解な対応に疑念を隠さない。 森岡さんの従姉妹(いとこ)である澤田初子さんが亡くなったのは04年7月。澤田さんは早くに家族を亡くし町立養護老人ホーム篠栗敬光園(当時)に入所。1996年からは入院生活を送っており、森岡さんが後見人を務めていた。 森岡さんは04年末、遺産約6000万円をすべて同町に寄贈する旨の、澤田さんの遺言書を検認。各金融機関の口座は凍結された。 その後、05年夏に篠栗町に手紙を送った。「遺産を寄贈するのは故人の意思だから異論はありません。ただ永代供養するために、その中のいくらかでもいただけたら―との主旨でした」(森岡さん)。だがこれに対する返答はなく「担当者に電話しても不在だとか何とか言って1度も連絡が取れなかった」。 その後も連絡はなく結局、初めて町関係者が森岡さん宅を訪れたのは今年6月3日。三浦町長ら2人が来訪した。「事前に連絡もなく突然来られ、びっくりした。後見人の私が求める筋合いではないかもしれませんが、感謝の言葉1つなかった」 澤田さんの遺骨はいまだに熊本のお寺にあり、お墓もない状態という。 この問題が篠栗町で公になったのは昨年秋。町民が遺贈金に関する情報開示請求を行ったが、町はこれを開示しないことを決定。議会でも取上げられるなどしたが、町側は「現時点では町の財産ではない」「遺産の総額は確認できていない」などと答えた。 澤田さんの死亡から3年以上経っているにもかかわらず、当事者としての意識が低いと言わざるをえない町の回答に、一部の町民が「情報開示出来ない理由でもあるのか」「何者かが横領したのではないか」と騒ぎ、警察に駆け込む始末に。 さらには今年4月、ある町民が「遺言書の検認から3年以上経ったのに遺贈金を町の財産として繰り入れず、保全を違法に怠った」として、篠栗町を相手取り事実確認請求訴訟を起こす事態となった。 だがこれについても森岡さんへの連絡はなかった。「最近になって一部の口座から町がお金を引き出したことを確認し、びっくりした。通帳や印鑑(写真)は私の所にあるのに」 実は、遺産を贈られた側は、通帳などがなくても預金を引き出すことが可能。 森岡さんはこのことを知らされておらず「ずっと大切に保管してきたことに意味がなかったとは・・。そんなことも町は教えてくれなかった」。不信感は頂点に達した。 「連絡を取らなかったわけではない。現に、遺言書の検認直後に担当者が変わったことを電話連絡しています」。本紙取材にこう話すのは藤和義副町長だ。だが、森岡さんからの手紙にどう答えたかなどについては「現在訴訟が起こされているので答えられない」と歯切れが悪い。 町の説明によると、遺贈金の話を弁護士に相談した際「少し時間を置いたほうがいい」とアドバイスを受けたという。「借金などがあった場合、これも『負の遺産』として引き受けることになる。また、後で新たな相続人が名乗り出る可能性もある。遺言を書いたのが本人であることの確認も必要だった」。 町側が弁護士から遺言書をあらためて受け取ったのは昨年10月。それから手続きを始めたという。「遺産の総額を調べることですら大変だったんです」 だがある弁護士は「4年近く経ったというは尋常ではない。今回のケースは町が危惧するような事案ではないのはすぐに分かるはず。放置していた、何かあるのではと批難されても仕方ない」と指摘する。また、総額を調べたいなら、森岡さんに尋ねればすぐに分かることだ。通帳はすべて森岡さんが保管しているのだから。「そう指摘されればその通りなのですが・・」(藤副町長)。 「横領疑惑」についても、潔白を証明するのは簡単。口座の履歴や残高証明を示せばよいだけだ。町にこれらの提示を求めると「それも現在係争中なので出すことができない。ですが、訴訟が終わったらきちんと明らかにしたい」と説明するに止まった。 なぜこのようにこじれてしまったのか。「今回のような事案はわれわれにとって初体験でした。また、担当者が変わったことも森岡さんに迷惑を掛けた一因です。すべてを終わらせてから関係修復を図りたいと思います」(副町長)。 これまでの経緯や疑問点を説明する責任が町にあるのは明らかだ。その上で、故人の意思を尊重するためにも遺贈金を有効に活用していただきたい。さもなければ篠栗町は「市民の善意を無にする町」との烙印を押されかねない。
04年に亡くなった女性から寄贈された遺産約6000万円をめぐり、篠栗町(三浦正町長)でちょっとした騒動が起きている。
一方の町側は昨年末、遺産の受け取り作業を開始。今年4月から澤田さんの口座から順次遺産を引き出しこれを基に福祉基金を設立、6月議会に提出した。
放置された? 遺贈金6000万円めぐり篠栗町で騒動 [2008年7月28日08:12更新]
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「町から連絡ない」
何者かが横領? 「保全を怠った」と訴訟も
町が遺産引き出すも 後見人は「蚊帳の外」
放置したわけではないが・・ 町側「関係修復を図りたい」

