(08年4月号掲載) 鉄を使ったオブジェや看板、照明などを製作していた寺田さんは、ここ数年で急速に評価が高まっていた。これからの活躍が期待された矢先の事故だった。 集められた作品は動物や鳥をモチーフにしたオブジェが中心で、いずれも寺田さんの豊かな才能をあらためて感じさせるものばかり。寺田さんの誕生日の4月2日に開かれた「キャンドルナイト」を取材した。 以前はお茶を製造する工場だったという建物に入るとまず目に飛び込んでくるのは、ギャラリーの中央に吊り下げられた大きな舟である。 細い鉄の線を組み合わせて溶接し作り上げた「方舟」。中には、これも鉄でできた動物が並べられている。 冷たく固い鉄を使いながらも、作品はどこか柔らかく、「生命の息吹」を感じさせる。 陽が落ちかけた夕刻、照明が消され、並べられた作品に次々とろうそくが灯されていく。 「すでに多くの作品が人手に渡っているので、これだけの数が一時に揃うのはこれが最初で最後。実際に集めてみると、燭台となっている作品が多いのに気が付きました」。こう話すのは寺田さんの弟、瀬下黄太さん。 「ですから、本来であれば47歳となるはずだった日にキャンドルを灯して祝おう、と」。 例えばビートルズの有名なアルバム「アビーロード」のジャケットをモチーフにした作品。 道路を渡る4人の姿が鉄線で造られている。これらに火を灯すと、印象が一変する。影が揺れることでオブジェが動き出したように見えて来るのだ。 「炎」を添えることで鉄に生命を吹き込んだ作品の数々。訪れた関係者らは、永久に失われた寺田さんの才能と未来にあらためて思いを馳せていた。 寺田さんが久留米市内の自宅に帰る途中、酒を飲んで車を運転した男性(34)にはねられたのは昨年12月15日未明。男性は自動車運転過失致死罪などに問われ3月14日、懲役2年の実刑判決を受けた。 寺田さんの遺族らは判決が出た翌日、福岡市・天神の繁華街で飲酒運転撲滅を呼びかけた。また遺作展では飲酒運転に厳罰を求める署名も募っている。 「今後は福岡市でも開催する予定です。これからも、作品を通じて飲酒事故の理不尽さを多くの人に訴えていきたい、寺田太郎の死を無駄にしないために」(瀬下さん)。遺作展は4月20日まで開かれている。
昨年12月、飲酒運転による交通事故で亡くなった造形作家、寺田太郎さん=当時(46)=の遺作展が、佐賀県吉野ヶ里町のアトリエ「AMPギャラリー」で3月20日から開催されている(HP既報)。
炎に照らされ、人や鳥の姿が浮かび上がる。柔らかなろうそくの灯りに満たされるギャラリー。壁にできたいくつもの影がゆらゆらと揺れる。
「今は家の中でろうそくを灯すことはめったにありませんから分かりにくいのですが、こうして見ると、燭台として火を灯すことで初めて寺田の作品は完成するのではないか、と再認識しました」(瀬下さん)。
失われた才能再認識 造形作家・寺田太郎氏の遺作展 [2008年4月17日09:08更新]
タグで検索→ |

