(07年11月号掲載) 近く判決が言い渡される見通しだが、無罪判決が出れば「冤罪事件」として、当局の捜査のあり方が厳しく問われることになりそうだ。 調べなどによると、教育長と女性職員のトラブルを知った藤原さんら3人が共謀して金を脅し取ろうと計画。昨年8月から9月にかけ、「知人の女性が宴席などで教育長からセクハラを受けた。マスコミなどに公にする」と書いた脅迫文書を送るなどし、現金6000万円を要求した、とされる。 教育長は金を支払わず、同年10月に前原署に被害届を出した。同署は同11月23日、3人を恐喝未遂容疑で逮捕した。 この脅迫文を書き、捜査当局に「恐喝グループの黒幕」とされた藤原さんは「文書を送ったのは事実だが、金を脅し取る計画には私は関与していない。2人が私の知らないところでやったことで、恐喝には一切関わっていない」と、逮捕直後から容疑を否認。しかしほかの2人が「藤原さんと共謀して現金を要求した」などと“自白”したことから、同罪でともに起訴された。 藤原さんの主張はこうだ。「教育長に文書を送ったのは、セクハラされた女性が職場を辞めさせられそうになっている、と聞いたから。そんな横暴を許してはいけない、何とかして急いで止めなければならない、と思った」 藤原さんが、恐喝グループの仲間とされた男性から教育長のセクハラ行為について話を聞いたのは昨年8月。憤りを感じた藤原さんは、職員の女性に対し数年間に渡りセクハラ行為を繰り返していたとした上で「教育者のトップとしてあるまじき行為」と批判する文書を作成。「不倫通告書」と題して自分の名前を明記、同8月8日に内容証明付きで教育長宅に郵送した。 この段階で藤原さんは、被害にあっていた女性の名前を教えられていなかった。また、共犯とされた2人のうち1人とは、逮捕されるまで会ったことすらなかった。 一方、2人はこの時点ですでに、教育長から金を脅し取ろうと計画していた。藤原さんは「そんな話はまったく聞いていなかったし、自分もそのつもりはなかった」という。では、なぜ藤原さんは、「会ったことすらない相手」と「共謀して金を脅し取ろうとした」ことになったのか? 容疑を否認する藤原さんに対し、ほかの2人は「藤原さんと相談し、脅し取った金の分け前など決めた」と、場所や日時、会話の内容などを詳細に“供述”。これが「藤原が黒幕」の決め手となった。 ところが公判が始まると2人は一転して供述を全面的に否定。「藤原さんと金の話はしていない」と証言した。 弁護士 供述書にサインしているが、自分の部分は認め、藤原さんに関する部分は(事実と)違うのか? 男性 はい 弁護士 刑が軽くなることも考え、(藤原さんは関係ないと)言えなかった? 男性 検事、刑事には言いたくても言えなかった 弁護士 警察の供述書、検察の供述書にある藤原さんとの金の話は、ないということですね? 男性 はい、そうです 検事 (関係のない)藤原さんを巻き込んだことになるのだが? 男性 巻き込んだことは申し訳ない (今年6月8日の公判より) 捜査当局は、最初に教育長に届けられた「不倫通告書」と、その後の2人による恐喝行為を一連のものと考え、3人が共謀した―との「見立て」で逮捕に踏み切ったとみられる。 だが調べの過程で作り上げた「ストーリー」は、2人の被告が藤原さんに関する部分を全面的に否定したことで、もろくも崩れ去ろうとしている。 今回の事件で、もう1つ重要なポイントがある。それは、藤原さんが事態を公にしようと、関係者に情報提供したと主張している点である。 藤原さんは「不倫通告書」を教育長に郵送した直後、懇意にしていたマスコミ関係者に対し「報道してほしい」と、この文書を提供したという。また、県の教育部幹部に対しても文書を直接持参した。さらにこの後、昨年8月19日に被害女性の名前がわかった段階で、同じくマスコミ関係者や県に情報を流したという。 藤原さんが情報を入手した直後にマスコミなどに流したのかどうかは、恐喝に加担していたか判断する上で非常に重要な要素である。報道などで事態が公になった後であれば、その件をネタに金を脅し取ることなどできないからだ。 被告の1人が最初に教育長宅を訪れたのは同8月22日。藤原さんに恐喝の意思があれば、それ以前に「大事なネタ」 を公にするような行動を取るはずがない。 つまり、 藤原さんが情報提供した行為は、 恐喝する意思がなかったことを示すものといえる。 裁判所側も、当然ながらこの点に注目。いったん決まった判決期日を延ばし、関係者を証人尋問している(詳細は「記者’s EYEs」参照)。 なお、藤原さんが保釈されたのは今年6月15日。逮捕から約200日に渡って拘留されたことになる。 鹿児島県議選に絡む冤罪事件(志布志事件)などを契機に、捜査当局の取調べのあり方に、より一層厳しい視線が注がれている。 今回の恐喝未遂事件で藤原さんに対し、裁判所はどのような判断を下すのか。もし無罪になれば、なぜこのような供述が出てきたのか、自白の「強要」があったのか、捜査をチェックすべき検察はその責任を果たしたのか―といった問題が噴出するのは必至。判決の行方が注目される。
二丈町の教育長を脅し、6000万円を奪おうとしたとして昨年、3人の男が県警前原署(写真)に恐喝未遂容疑で逮捕された。この事件の公判で、2人の被告は脅した事実を認めたものの、捜査当局に「黒幕」とされた不動産業、藤原正男さん(58)=福岡市早良区=は「まったくの事実無根、捜査当局の捏造だ」と一貫して主張。ほかの2人も「激しく追及され、供述書に嘘の返事をした」などと、捜査段階での供述を全面的に翻し「藤原さんは無関係」と述べている。
恐喝未遂事件で冤罪か “共犯者”は「彼は無実」 [2007年11月23日21:19更新]
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