弾劾裁判の開始を審議へ 国側は「和解に応じる用意」!? [2007年11月5日09:07更新]

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(07年10月号掲載) 

福岡地裁小倉支部田川市の鉄工所に対する融資をめぐる一連の裁判に絡み、原告側が出した福岡高裁・地裁の裁判官12人(うち2人はすでに退職)の罷免を求める請求について、弾劾裁判所訴追委員会(東京)が弾劾裁判を開くかどうか審議する方針であることがわかった。

一方、一貫して原告側の訴えを退けて来た裁判所が、所有権確認訴訟でこれまでの判断を根本から覆す原告有利の判決を出し、その上で国は「話し合いに応じる用意がある」と、訴追委員会の動向によっては和解の可能性があることをほのめかしている。

弾劾裁判の開始をめぐって原告と被告とのせめぎ合いが展開されており、裁判は大きな転換点を迎えている。
写真=福岡地裁小倉支部)



 

一連の裁判は、 元鉄工所経営者の神前一郎さん(84)=北九州市=が、 国や福岡銀行(本店福岡市)を相手に起こしているもの。

訴えによると、神前さんは1990年、田川市内に所有していた鉄工所と土地を担保に福銀から6000万円の融資を受けた。その後追加融資を持ち掛けられたが結局融資はおこなわれず、鉄工所は99年、事実上倒産。福岡地裁田川支部は00年に工場の競売開始を決定、工場と土地を差し押さえた上、工場内の工作機械も競売に掛け、売却した。

法廷に警官配備、原告を身体検査

この経過や裁判所の対応をめぐり原告は7月、「裁判所は、 悪意をもって人の財産を略奪した」 などとして裁判官の罷免を求める文書を訴追委員会に送った(7月号既報)。

委員会は原告の訴えのうち、地裁田川支部で行われた裁判に注目。この公判では裁判所職員7人と県警田川署員2人が警備に当たり、原告らを身体検査するなど民事裁判では考えられない警備体制を取った。さらに、原告の裁判官忌避の申し立てを無視し、強引に閉廷したという。

訴追委員会は「なぜこのようなことが起こったのか」と詳細な状況などを原告側に聴取し「弾劾裁判を開くかどうか審議する」 と伝えたという。

裁判所が警官を使って原告に圧力を掛け、法廷での言論を妨害した可能性がある―と考えているとみられる。

従来の判断を覆す 

一方、この動きと並行する形で進められていた地裁小倉支部での裁判で、これまでの裁判所の判断を根本から覆す判決が出た。

神前さんとその親族が「機械類の所有者は親族のもの」と所有権の確認を求めた裁判。 小倉支部は神前さんと親族の公判を分離した上で9月26日、神崎さんの訴えについて「被告の国などは 『機械は神前さんの物』 とは主張していないから、神前さんに訴訟の利益がない」と請求を棄却する判決を出した。つまり、消極的な形ながら「機械は神前さんの物ではない」と事実上結論付けたのだ。

裁判所が競売に掛けようとした機械類について原告側は当初「所有者は神前一郎ではなく娘であり競売に掛けるのは不当」と異議を申し立てた。だが裁判所は 「第三者の物であっても競売に掛けられる」 として機械類を差し押さえた。

その後いったん競売は中止になったが05年末の判決で「機械類は神前鉄工所の物である」と認定。これを元に昨年、機械類は売却された。 

原告は控訴し今年8月、高裁は一審の取り消しを決定。あらためて所有権確認請求訴訟を起こしていた。

これまで「機械を競売に掛けたのは問題ない」としてきた裁判所の判断は「機械は神前鉄工所の所有物」という前提の上に成り立っていた。ところが今回、裁判所自らがこの前提を覆す判決を出したのだ。

弾劾裁判の開始を避けるのが狙いか

なお、分離された親族の裁判はいったん休止され、近く再開される。

この判決の直後、福岡法務局を訪れた原告らは、関係者に「(国側と)和解に応じる可能性はあるのか」と問われ「そうなると弾劾裁判の請求の取り下げも考えたい」と返答。翌日、法務局は「弾劾裁判所から連絡があった段階で、内容によっては法廷内での〝話し合い〟について応じる用意がある」と伝えたという。

これまでの判断を覆した上で、所有権確認の裁判をいったん休止したのは、訴追委員会の動向を見極めようとしたとみられる。

つまり、弾劾裁判が始まりそうな雲行きになれば和解に応じて請求を取り下げさせよう―これが裁判所側の思惑というわけだ。

弾劾裁判開始をめぐり、原告と国側との間でせめぎ合いが展開される中、 訴追委員会の判断、 そして裁判所の対応が注目される。