(07年9月号掲載) 一方、海岸エリアでは様々なイベントが行われ、今や市民の憩いの場として定着しつつある。 行政側の「本音」とは別に、いかに市民の財産へと変えていくか。それには、港湾エリア全体を活性化させて「回遊性」を持たせるしかいないのだが・・。 週末の賑わいを見せる県内随一の繁華街・天文館の交差点から東に向かう。いずろ交差点を越えて延びる「マイアミ通り」をまっすぐ行けば、すぐにドルフィンポートに到着する。 この間、徒歩でわずか10分あまり。だが、これほどの至近距離にも関わらず、天文館とドルフィンポートを行き来する人の流れはほとんど見られない。 「家族で食事をしようと、車で来ました」と語るのは市内在住の男性(30)。「週末などに時々来ますが、いつもこの周辺だけ。天気が良ければウォーターフロントパーク(東側の緑地帯)を散歩して過ごします」。 マイアミ通り沿いには商店などほとんどなく、天文館の賑わいはいずろ交差点でいったん途切れる。そして目の前には、常に多くの車が行き交う2本の幹線道路。物理的にも、また雰囲気的にも天文館と分断されている。 新しい商業施設を作る場合、客の「回遊性」を考えるのが今や定跡だ。福岡で言えば、博多リバレイン→川端通商店街→キャナルシティといった具合に、客が歩きながらポイントを回れるよう立地を配慮する。ドルフィンポートに関してはこの回遊性がなく、ぽっかり孤立している状態だ。 ドルフィンポートが誕生した経緯は前回紹介した。「ろくにマーケティングをしたわけでもなく、自分たちの都合で飲食店街を作った」(地元メディア記者)。現状が、まさにそれを象徴している。「それなのにここが成功したら、それこそ奇跡ですよ」(同)。 週末の夜ですら、賑わいを見せる飲食店は少ない。だが前述の通り、天文館エリアからの客を呼び込むのは条件的に極めて厳しい。南北に伸びる海岸沿いのエリアに人を呼び寄せ、新たな回遊性=人の流れを作り上げるしかない。 海岸エリアの埋め立てが完成した直後から、ウォーターフロントパークでは様々なイベントが開催されてきた。錦江湾サマーナイト大花火大会、農林水産祭、土木フェスタ、KKB(地元民放)子ども博、ウォーターフロントフェスティバル・・。そのたびに多くの市民が集まり賑わった。 最近では「親子で行くフリーマーケット」(地元情報誌主催、春・秋開催)が開かれた。またドルフィンポート南側の住吉町では地元産の野菜や魚などを目玉商品に、「みなとゆめ市場」がNPO法人を中心に開催され、いずれも市民に好評だったという。 ただ、このような大イベントは一過性のもの。小さな規模でも、常に何かが周辺で開かれている―という状況を作り出し、人を呼び込むのが肝要だろう。 「相手が誰であろうと売り払いたいが、市民に定着してしまうとそれが実現しにくくなる―というのが、いまだに行政の本音ですよ」(メディア記者)。とはいえ、このエリアを「市民の財産」に変えなければ、借地期限が切れた時、土地の処遇をめぐりまたゴタゴタが起きるかもしれない。それまでのツケが市民へと回される可能性すらある。 そのためには市民自身が知恵を絞り、行動するほかない。さらに言えば、それを行政側が支援する、という連携こそが必要ではなかろうか。
地元財界と行政の思惑が絡み合い、「外部資本から地元経済を守る防波堤」として立ち上げられた鹿児島市のドルフィンポート。だが、市の繁華街からほど近い絶好の立地条件ながら、決して賑わっているとはいえない。
(写真=ドルフィンポートから桜島を望む)
【九州・街づくり事情】鹿児島 ドルフィンポート(下) [2007年9月15日14:45更新]
途切れる回遊性
海岸沿いに一体感を
イベントを恒常的に
エリアを市民の財産へ 行政の支援こそ不可欠

