自民惨敗、安倍政権に鉄槌 ’07参議院選挙 [2007年8月15日12:45更新]

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(07年8月号掲載) 

安倍内閣発足後初の大型国政選挙となった第21回参院選は7月29日投票、即日開票された。苦戦が予想された自民党は全国29の1人区で6勝に終わるなど37議席しか獲得できず、1998年参院選の36議席に次ぐ惨敗。自民・公明の与党は過半数割れとなった。

一方、民主党は改選32議席を大幅に上回る60議席に達し、参院第一党の座を初めて獲得した。安倍晋三首相は続投を表明したものの、党内からは批判の声が上がっている。

福岡では事前の予想通り前職の岩本司(民主)、松山政司(自民)両氏が危なげなく勝利。しかし九州の1人区では全国的な傾向同様、自民候補の落選が相次いだ。

(写真上:岩元司陣営、写真下:松山政司陣営)



   

 ’07参院 福岡選挙区当選者
 当選岩本 司
43歳民主 前
 
1,003,170
 
 当選松山 政司
48歳
 
自民 前
 
791,152
 
 田中 美由紀 33歳
 
共産 新
 
185,713 
 金岩 秀郎 44歳
 
社民 新
 
113,293
 
 馬場 能久
 
57歳
 
諸派 新
 
35,942
 
 秀南 高行32歳
 
諸派 新
 
15,244
 

予想通りの結果

午後8時過ぎ、テレビの開標速報で当確が流れた瞬間、集まった支持者から大きな歓声が上がった。笑顔で登場した岩本氏は「県民1人1人の声をしっかり国会に反映させていきたい」と力を込めた。

昨年の福岡市長選以来、県内を席巻した「民主旋風」。その総仕上げとばかりに今回積み上げた票は100万あまり。01年の参院選では約9000票差で2番手だった岩本氏だが3年前の同党候補の得票をも大きく上回り、福岡選挙区過去最高の得票数でトップ当選を果たした。

「福岡は2人の現職で決まり」。メディアの事前予想ではこんな声が上がっていた。自民への逆風が吹く中、ともすれば楽観ムードが陣営内外に漂った。それでも、連合福岡をはじめとする支持母体や、大躍進した民主県議・市議らと連動。基礎票をがっちり固めた上に与党への批判票の取り込みに成功した。

反自民の嵐吹き荒れる

一方の松山陣営。岩本氏に次いで2番目に当確が速報されると、福岡市のホテルに集まった支持者からは歓声とため息が漏れた。

「何としてもトップ当選を」。こんな掛け声とは裏腹に、逆風をまともに受けた選挙戦だった。年金問題、閣僚の相次ぐ失言や事務所費問題。岩本氏には20万票以上離され、「喜びも半分」(支持者)との声が聞かれた。

事前の予想通りの結果となり、選挙戦自体に盛り上がりを欠いた感のある福岡。しかし全国的には「反自民」の嵐が吹き荒れ、目を覆いたくなるような「惨状」が展開された。

勝敗の鍵を握ると言われた1人区では、東北・四国で全敗するなどわずか6勝。岡山選挙区の「姫のトラ退治」―参院幹事長だった片山虎之助氏が民主の姫井由美子氏に苦杯を喫したのは、まさに象徴的だった。

それでも安倍首相は続投

歴史的大敗を喫した自民だが、安倍首相は「惨敗した責任はある」としながらも「反省すべき点は反省する」「国民の声を厳粛に受け止める」などと話し、その上で早々に「続投」を表明した。

実は選挙前の7月上旬、「参院選で負けても『安倍続投』で決まった」との情報が東京・永田町周辺から漏れ伝わってきた。その段階での予想獲得議席数は、大半が「おそらく40半ば」「悪くても40台前半」といった楽観的なもの。あえて退陣する必要はない―という意見が大勢を占めていたとみられる。

だがその後、事務所費問題が発覚した赤城徳彦農水相をあくまで擁護しさらに有権者の反発を買う一方、そうしたマイナス要素を覆すだけの材料もなく、安倍内閣の支持率は低下の一途をたどった。結果、「最悪の結末」(自民関係者)を招くことになった。

政局は依然流動的

この結果を受け、自民党内部からも首相退陣論が噴出している。ある民放のニュース番組に渡辺喜美氏と石破茂氏が出演。渡辺氏が大相撲にたとえて「安倍氏は今カド番の状態」とかばうと石破氏は「政治と相撲は違う。国民をバカにしている」と反論。首相の進退をめぐって二分する党内事情を如実に示していた。

選挙後も安倍内閣の支持率は下がり続けている。「選挙で負けたのだから責任を取るのが当然では」「なぜ辞めないのか」。こうした有権者の率直な疑問に対する明快な答えがない。さらに、あれだけ擁護した赤城氏を選挙直後に更迭するなど「責任転嫁」とも受け取れる行為も。

首相は8月末の内閣改造を表明しているが、果たしてこのまま逆風を乗り切れるのか。きわめて流動的な情勢の中、「年内解散、総選挙」の声が、与野党を問わずすでに出始めている。

 

民主 政権政党へ正念場  公明 戦略の見直し必要

「自民大敗、民主大勝」で終わった今回の参院選。だが、有権者が民主を支持・選択した結果―とまでは言い切れない。それを端的に表しているのが、あちこちで聞かれる「自民にお灸をすえた」という言葉だ。メディアの調査でも、自民支持者のうち相当数が民主候補に投票している。この票が引き続き民主に入るかどうか疑問が残る。 

  合計選挙区
 
比例代表
 
参院新勢力
公示前
 
自民
 
37
23
 
14
 
83
110
 
 民主60
40
 
20
 
109
81
 
 公明9
2
 
7
 
20
23
 
 共産3
0
 
3
 
7
9
 
 社民2
0
 
2
 
5
6
 
 国民2
1
 
1
 
4
4
 
 日本1

 
1
 
1
1
 
 諸派0
0
 
0
 
0
0
 
 無所属7
7
 

 
13
6
 
 合計121
73
 
48
 
242
240
 

福岡県内の一連の選挙をみても、民主の躍進を支えたのは「現状を何とか変えて欲しい」との期待感、裏を返せば自民政治への失望があったことは明らかだ。

反自民票の多くが民主に流れたことは「2大政党化」への流れがさらに強まったことを示している。だからこそ、民主の責任はより重い物となったといえる。選挙直後、メディアでまるで政権を取ったかのような発言をする若手議員がいたが、有権者はそういった行動を冷静に見ていることを忘れてはならない。政権を担うに値する政党へ向け、まずは参院での「さばきぶり」が注目される。

一方、自民と民主の間に埋没した感があるのは公明党だ。今回は3選挙区で候補が落選。選挙区で落選者が出るのは実に98年以来。九州では「目標110万票を掲げたにもかかわらず95万票弱にとどまった。本紙は統一地方選の結果を受け4月号でこう書いた。

「きっちりとした組織を頼りに、確実に議席を確保する―という手法だけでは、もはや通用しないのではなかろうか」

これは公明を念頭に置いたものだった。「組織の締め付けが以前より効かなくなっている」。ある公明関係者の言葉だ。メディアの出口調査によると、福岡でも公明支持層の約2割が民主・岩本氏へ投票したという。

党の独自性と存在感を示し、より広い層に訴える戦略を取らなければ、自民に強烈な逆風が吹く中、今後も「ミニ自民」と見なされ、苦戦を強いられる可能性が高いのではなかろうか。