実態に合わぬ入管の審査基準 「大学に甘い」と批判も [2007年7月15日13:50更新]

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(07年7月号掲載) 

大学に「甘い」対応

日本語学校から批判自他ともに認める「アジアからの玄関口」福岡。中国・韓国をはじめアジア各国からビジネスや観光で福岡、そして九州を訪れる人々は年々増えている。各地の日本語学校で学ぶ就学生、あるいは大学への留学生も増加傾向にあり、同時に彼らが来日する際に偽の文書を使うなどの不正行為も発覚している。6月には佐賀大で中国人留学生が、偽造された中国の大学の卒業証書を使って入学していたことが判明。大学側の審査体制の不備が露呈された。

日本語学校関係者からは「大学への留学生に甘い入国管理局の審査も問題。実状に合っていない」と、変化する状況に対応し切れていない入管に、批判の声も上がっている。



少子化時代に生き残り賭け

「『留学生を増やしたいがために、きちんと審査していなかったのではないか』という批判は甘んじて受ける」。偽造した卒業証書を使った、中国人留学生5人による不正入学が判明した後、佐賀大の谷川照学長は会見でこう語り、大学側の審査体制の不備を認めた。

5人はいずれも、佐賀大が海外の大学と結ぶ協定などに基づかない私費留学生で、学力試験がない「研究生として来日した。同大学では、卒業したとする中国側に確認するなどのチェックをしていなかった。

今回の不正入学の背景について、ある大学関係者は「少子化時代を迎え、特に地方大学は生き残りに必死。留学生をどんどん受け入れなければ消えていくしかない、との焦りがある」と解説する。政府も今後、留学生の受け入れ数を増やす方針で「各大学が真剣に対策を考えなければ、佐賀大のような例はまた出てくるでしょう」(同)。

だが問題なのは、果たして大学側だけだろうか。

就学生に厳しい入管「一番の問題は、入国管理局の対応ですよ。就学生には厳しく留学生に甘い。佐賀大の事態は最初から予想できた」。こう話すのはある日本語学校関係者だ。

外国からやって来た学生は一般的にはみな留学生と呼ばれるが、正確には就学の在留資格で入国し日本語学校などに通う「就学生」と、留学の在留資格で入国し大学に通う「留学生」とに、分けられる。

就学生については、入国後に学校に通わず仕事に励む「出稼ぎ」の隠れ蓑として悪用される例が多かった。また、福岡市東区の一家4人殺害事件(03年)のような、就学生による凶悪事件も発生。このため入国管理局の就学生への入国審査は非常に厳しい。

たとえば、中国の自宅に電話し学生本人に「日本語をいつから、どこで学んだか」と聞く。就学費用を出す者(多くの場合その両親)には「給料はいくらか」「給料日はいつか」、さらにはその勤め先にまで電話し、当該人物が実際に働いているか確認する例もあるという。

独自の審査体制

また、審査の過程で不正が発覚した場合の「処罰」も重い。

「中国のある日本語学校の卒業生に不正が発覚した場合、その学校からの希望者すべてに入国許可を出さなかった例もあった」(前出関係者)。

このため日本語学校の中には、現地に事務所を置き、学生宅を訪問したり卒業した学校を確認するなど独自の審査している所も多い。

「これまでの様々な事情や経緯もあり、学校によって程度の差はあるものの、日本語学校と大学とは努力の質と量が違う。だからこそ、大学に甘い入管の審査基準は時代の流れや実状に対応できてない」(同)。

 “縦割り行政の弊害”が原因?

こうした審査基準について、あるメディア関係者は「官庁特有の、縦割り行政の弊害がある」と指摘する。「文部省(大学を管轄)に対し、法務省(入管を管轄)には微妙な遠慮があるようです。大学の『権威』を特別視することは現実に即してないことを、佐賀大のケースは示しているのではないでしょうか」

ただでさえ苦労が多いであろう入国審査業務だが、今後はさらに重要となるのは間違いない。実状にあった審査基準を徹底するよう、入国管理局にはお願いしたい。