県は本来の調整役を 産廃処分場めぐる裁判受け [2007年4月16日10:35更新]

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(07年4月号掲載)   

産廃処分場めぐる裁判受け3月22日、産業廃棄物処分場をめぐる裁判で、1つの判決が下された。福津市本木で産廃処分場を運営する「名島産業建設」(福岡市)に対し「使用期限後も操業しているのは公害防止協定違反」として、福津市が処分場の使用差し止めを求めた訴訟。福岡高裁(西理裁判長)は、差し止めを命じた1審判決を取り消し、福津市の請求を棄却した。

市は最高裁に上告し、法廷での争いはまだ続く見通し。なぜここまでこじれてしまったのか。同社と市の争いの背景には、本来、調整役を務めなければならない県の“怠慢”があるといえる。



公害防止協定

名島産業建設が福間町(当時、05年に津屋崎町と合併し福津市)で産業廃棄物最終処分場の運営を始めたのは1989年だった。その後、数度の拡張・所在地変更を経て現在にいたっている。

さて、問題となっているのは名島産業建設と福間町との間で締結された「公害防止協定」だ。これは、「住民の健康保持と生活環境の保全を図る」(前文)のが目的で、同社と矢野久雄・福間町長(当時)との間で交わされたものである。

最初に公害防止協定が結ばれたのは95年。処分施設の面積と埋め立て容量を規定し、施設使用期限として「平成15年12月31日まで。ただし、それ以前に上記埋立て容量に達した場合はその期日までとする」としている。さらに98年には、同社が変更許可を申請したことを受け、新公害防止協定を結んだ。

高裁の逆転判決

この協定は、福岡県が90年に制定した産廃条例に基いたもの。一般市民の中で環境問題に対する関心が高まってきた時代であった。その後、同社は期限を過ぎても操業を止めず、協定で定められた期限直後の04年2月、福津市が「協定違反」として提訴した。

1審の福岡地裁は「協定には法的拘束力がある」とし、福津市側の主張が認められた。これを不服とした同社は控訴。2審の福岡高裁は、一転して同社の言い分を認め、福津市の請求を棄却した。高裁判決は、この協定は「(施設周辺の)生活環境の保全を目的としたものにすぎず、期限を定めることは本来の目的を逸脱する」と指摘。使用差し止めは「(監視権限を持つ)県知事に申し立てるべきである」と結論付けた。

「知事の判断事項」

注目すべきは、高裁が県の本来の役割について言及している点である。産廃条例は、「知事は関係住民又は関係市町村の長が事業計画の実施に関し、設置者との間において、生活環境の保全のために必要な事項を内容とする協定を締結しようとするときは、その内容において、必要な助言をおこなうものとする」(15条、傍点筆者)と定めている。

高裁判決は「(施設使用期限条項は)産廃条例15条が予定する協定の内容としては相応しくないものであり(中略)この種の事柄は、知事の判断事項として知事の専権に委ねられているものというべきである」と指摘している。

もともと、期限を設けることについて同社は消極的だった。しかし、93年ごろには埋立て可能な容量の限界が近付き、事業計画を変更して県の許可を受ける必要に迫られていた。さらに県からは条例に基いた協定締結を強く迫られたため、仕方なく使用期限付きの協定を結んだ―というのが真相だった。

県へのメッセージ

名島産業建設の於保政美社長は「これまで県は『触らぬ神にたたりなし』といった態度で、何もしてこなかった」と不満を口にする。県が定めた条例を根拠に協定締結を迫りながら、何か問題が起こると知らんぷり―では、当事者も納得がいくはずがない。

産廃処分場をめぐる住民・自治体と業者間のトラブルは全国的にみても珍しくない。福津市でも住民の関心は高く、選挙の争点となったほど。同市が「処分場を追い出そうとしている」(同社長)事情も理解できないわけではない。

だが、市が選ぶべき道は、法廷での争いを続けようとするのではなく、高裁の判断に従って県知事に申し立てすることではないか。判決は「調整役として、本来の責務を果たしたらどうですか?」という、県に対するメッセージに、ほかならないのだから。