(07年4月号掲載) 麻生氏は政党の推薦を受けない「県民党」を掲げ、実績を訴える戦略を展開。多選批判や退職金・知事公舎問題をはねのけ、自民・公明支持層を中心に幅広く票を集めた。 その一方で、選挙戦を通じて「地域間格差」「教育・福祉」といった問題があらためて浮き彫りにされ、4期目を迎える麻生県政に大きな課題を突きつけた形となった。 福岡市博多区の麻生氏選挙事務所。投票締め切りの直後である午後8時過ぎから続々とテレビ各社が当選確実のテロップを流す。湧き上がる歓声。「おー!」。ほどなく姿をあらわした麻生氏は満面の笑みを浮かべ支持者らの歓声に応える。 報道陣に対し「県民党ということで戦って来たが、県民の皆さんのご理解をいただき幅広い支持を得られました」と力強く語った。これまでの多党相乗りの構図が崩れた今回の選挙戦。自民などが「多選」を理由に推薦を見送ったため、麻生氏は当初から政党色を極力薄めた「県民党」を掲げ「政党に頼らない選挙戦」を展開した。 だが実態はどうだったか。ある県政担当記者はこう語る。「あえて県民党を名乗り全面に押し出したということは、裏を返せば実際はそうじゃない、ということ。簡単な論理ですよ」 自民党などは地元レベルで麻生氏支持を決定し後方支援に回った。各メディアの出口調査によると、自民・公明の支持層のほとんどが麻生氏に投票している。現実にはこれまでと変わらない、企業や団体の組織票が麻生氏を支えたといえる。「まあ、有権者を〝だました〟とまではいいませんが・・」(前出の県政記者)。 その一方、無党派層の得票数もほぼ稲富氏と拮抗している。政党色を薄めたことで、無党派層の取り込みにも成功した、といえる。 「しかしねぇー。とてもあれだけの無党派層から支持を得られるとは思えない反応だったんですが・・」と語るのはある選挙担当記者。街中に出て演説する麻生氏に足を止める人は少なく、周囲は人影もまばら。取材記者の間で「いやぁ、こりゃあ“お寒い”状況ですわ」「こんなので本当に票が取れるんですかね」といったひそひそ声が漏れるのが「定番」となっていた。 別の県政担当記者は「結局、稲富氏が無党派層の受け皿にならなかった。知名度が上がらなかったことに尽きますね」と解説する。 あるメディアの調査では、麻生氏に投票した有権者の約35%が公約の「子育て支援や高齢者、障害者福祉」に期待したと答え、全体のトップを占めている。 「まあ、麻生さんは基本的に、福祉や教育に興味ないですから」と話すのはベテラン政治記者。「福祉だ教育だと言い出したのが年明けから。それまでは『自動車産業の発展』一辺倒だったから、選挙を意識したものなのは明らかです」 選挙戦を通じ、稲富氏の陣営には「格差を是正してほしい」「福岡を変えてほしい」との多くの声が寄せられている。「街頭での反応も、麻生氏とは比べものにならないくらい良かった。稲富氏は確かに選挙には負けたが、麻生県政では見えにくかった問題点を明らかにし、県民の本音を引き出したのではないでしょうか」(前出の政治記者)。 実質的に自民対民主の対立構図となった選挙を通じ、あらためて浮き彫りになった県政の課題。麻生知事が公約をどう実現していくのか、あるいは単なる「選挙用の方便」だったのか。今後の県政運営には、これまでとは比較にならないほど厳しい、県民の視線が注がれることになりそうだ。 「私の力が足りなかった。申し訳ありません。支えてくれた有権者に感謝しています」。涙ぐみながら敗戦の弁を語る稲富氏。「麻生氏当確」の報に、福岡市中央区の陣営事務所は重苦しい雰囲気に包まれた。 福岡・北九州両市長選に勝利した民主。「次は県知事の座を」と意気込んで候補を擁立、総力戦で戦う―かに見えたが、実態は一枚岩というには程遠い状態だった。 まず、候補選びでのゴタゴタ。当初、知事選の候補として名前が挙がっていたのは県南が地盤の現職代議士だった。しかし突然、議員経験のない稲富氏の名前が挙がると、激しい議論が始まった。 この代議士を強力に推したのが、福岡市を地盤とする元代議士。実はこの元代議士は、現職代議士が知事選に出馬すると繰り上げ当選するという事情があった。元代議士のなりふり構わぬ“プッシュ”ぶりに、「あそこまでミエミエだと笑うしかないね」とあきれ顔の党関係者もいたほどだ。 最終的には党本部の意向もあって候補は稲富氏に決着したが、現職代議士を推した勢力とのあつれきは解消されないまま選挙戦へ突入。告示前に有権者に配るはずの事前ビラが大量に残されるなど、一部の議員らが明らかに非協力的な態度を示し、知名度の低い稲富氏には致命傷となった。 そして、本音では現職の麻生氏とは一戦交えたくなかった、民主党県議団。選考の過程で「稲富では戦えない」との意向を表明するなど、不戦敗を主張した。 擁立決定直後には一部の県議が「退職金廃止や公舎・公用車の見直しを公約にする」と勝手に“フライング”。この段階では、そのような意向は稲富氏本人はまだ示してなかった。にもかかわらず、メディアで報道されたことで、戦略上それがいいのかどうか内部での議論がないまま、既成事実となってしまった。 結局、支持者から「民主党は本気なのか」と怒りの 麻生氏は、民主党関係者に菓子折りくらい包んでもバチは当たらないだろう。
4月8日投開票の福岡知事選は、無所属現職の麻生渡氏(67)が、いずれも無所属新人の稲富修二氏(36)=民主・社民推薦=、平野栄一氏(64)=共産推薦=を破り4選を果たした。
(写真=「当選確実」の報に万歳する麻生渡氏)
声があがるほどの状態。これでは勝てるはずもない。最大の被害者は「福岡をぜひ変えてほしい」との願いを込め票を投じた、多くの有権者であることは間違いない。
現職・麻生渡氏が4選 民主・稲富氏届かず ’07県知事選 [2007年4月15日00:38更新]
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4期目に課題山積
民主 一枚岩には程遠く 稲富氏、擁立のゴタゴタ致命傷に
不戦敗志向の県議団

