「住民の声を聞いて」 地元の意向聞かずに事業推進? [2007年3月15日18:11更新]

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(07年3月号掲載) 

福岡市南区の若久地区で展開されている「コミュニティゾーン(CZ)形成事業」。若久小学校周辺エリアの道路を「オアシス」「ふれあい」「なかよし」ロードと名付け、歩行者専用にしたり一方通行にして交通量を規制、歩道を整備して「歩行者と地域住民に優しいエリア」を創出するのが狙いだという。だが、実はまだ沿道住民の反発が根強く残っており、一部側溝工事がおこなわれていないなど全面完成にはいたっていない。

「私たちの意見を聞いてほしい」。住民の切実な要求は、「コミュニティ」「オアシス」などという言葉とは程遠い、いまだに住民の声を無視し続ける行政の姿勢を浮かび上がらせている。



突然の「進入禁止」

筑紫丘トンネルを抜けて大池通りへと向かう塩原野間線。その途中にある野間交番の先に、若久小学校へと向かう小道がある。ここがCZ形成事業の中心「オアシスロード」(市道3106号線)だ。東側歩道がきれいに整備され、一見実に快適な住宅道路である。 「忘れもしない2000年8月1日。突然これが取り付けられました。それまでこんなことになるとは私たち住民には何の説明もなかった。びっくりしました」。オアシスロードの入り口に喫茶店を構えるAさんは、大きく掲げられた進入禁止の標識を指しながら激しい口調でそう語る。

Aさんはこの小道を数十メートル進んだ所に来客用の駐車場を借りている。以前は車で来るお客はこの道を進んでいたのだが、現在は終日車両進入禁止となったため大きく迂回しなければ駐車場にたどり着けない。「店にとってはまさに死活問題ですよ」

弱者に優しいはず・・

Aさんがこの場所に移転してきたのは1996年。市の立ち退き要請に応じ、心機一転、新しい地で商売に精を出そうとしていた矢先の出来事だった。その後は道路の問題から一部の客足は遠のいたが「長年の常連さんを落胆させるわけにはいかない」と、何とか商売を続けているのが現状だ。

このCZ形成事業が始まったのは98年で、大名・西新百道地区とともに市内3カ所でおこなわれ、若久地区の総事業費は約3億1000万円(うち国費1億円)。事業の売り文句に「すべての人に優しい道づくり」「弱者に優しい」「より多くの住民の意思を反映し」などといった美辞が並ぶ。

住民の声は届かない

この事業の推進調整協議会には、総勢26人が名前を連ねる。地元代表として公民館長や自治会長、町内会長、学校関係者。さらに警察・消防・区役所職員。しかし、沿道住民は1人も入っていない。

突然の出来事に、当然のことながらAさんら沿道住民は南区に抗議。地域整備課は「98年5月7日に協議会の要請によって説明会を開催して工事内容を説明。議事録はないが、町内会長以下20~30名の参加者があり、特段の反対意見はなかった」と回答。この会合をもって「地域住民の同意を得た」としていることが、初めてわかった。

住民がおこなったアンケートでは、沿道住民(15名)のすべてがこの会合が開かれたことをまったく知らなかった。当局側が「各個人への情報伝達は文書配布、回覧板や掲示板、公民館だよりによりおこなわれている。このことから、住民への周知は十分におこなわれたと理解している」といっているにもかかわらず、である。Aさんの「われわれの意見を役所に直接聞いてほしい」という要望はいまだ実現されていない。

話し合いの場をこのほかにも、若久のCZ事業は問題点が多い。それはいずれも、事前に住民との話し合いがろくに持たれていないことが原因だといわざるを得ない。当局は「コミュニティ」の本来の意味を知らないのだろう。

最後にAさんの言葉を記しておく。「われわれは事業に反対しているのではない。ただ、沿道住民との話し合いの場を持ってほしい、それだけなんです」