県内を走り回る知事に 知事選候補・稲富修二氏、語る [2007年3月15日14:21更新]

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(07年3月号掲載) 

知事選への決意を語る稲富修二氏4月8日投開票の福岡県知事選に、元民主党県連副代表の稲富修二氏=無所属=が出馬を表明した。知事選には3期12年勤めた現職の麻生渡氏(67)と、教育アナリスト平野栄一氏(64)が立候補を表明している。

今回は自民党などが「多選」を理由に麻生氏の推薦を見送ったことでこれまでの「多党相乗り」の構図が崩れ、現職対新人の激しい戦いが予想される。福岡・北九州両市長選で推薦候補が勝利した民主党が激論の末に選んだ稲富氏は現在36歳。出馬にいたった経緯や今後のビジョンなどについて聞いた。



 

─党内での激しい議論の末に、正式に知事選候補となりました。まず、出馬にいたった経緯をお聞きしたいのですが

私は05年の衆院選で福岡11区(行橋・田川市など)から出馬しました。それからは地元の一住民として活動をおこなう一方、地域が抱える問題を直接見てきました。また昨年から福岡・北九州両市長選で選対の一員として活動し、市民の変革を望む声・要望を直接肌で感じました。

その結果、知事選に候補を立てないのはありえない、「新しい知事」という選択肢を県民に提示するべきだ、と強く考えました。

─それが「自分だ」と明確に思ったのはいつですか

自分でも「いつ決めた」と明確にはわかりません。党内で議論が展開される中、私でも役に立てるのであればぜひ挑戦したいという思いが強まった、というのが正直なところです。

─行政経験のない若い候補ということで「当て馬ではないか」との見方も一部で報道されましたが

まったくありえません。麻生氏にあと4年任せていいのか。社会が変わっていく中で新しい県政の基礎を作らなければならないのではないか。それにはどのような人物が適任なのか。短い期間ではありましたが、党内でも激しい議論が展開されました。その結果として今、私がこうして立候補したわけですから。

新しい知事像とは

 ─さきほど「新しい知事」と言われましたが、現在の麻生県政に対する印象は?

自動車産業の誘致・発展をはじめ、ある程度の実績は残されたと思います。ただ、できなかったことも確かにあるのでは。環境・福祉の分野は弱いのではないでしょうか。

─党内の議論では「若さ」が問題になりました

自分ではそれが不利な点になるとは考えていません。昨年には息子が生まれましたし、同時に親の介護の問題も抱える世代です。社会を支えていく、未来を創っていく、まさに責任世代です。そういったことも含め、現職との違いを出せるのではないかと思います。

今重要なのは過去ではありません。セーフティネットが崩れ不安が渦巻く中、福岡県の未来を誰に託すのか。それを県民に問いたいと思います。

─これからの福岡に必要な知事像とは?

一言で表現すれば、県民の生の声を聞いて一緒に考える、県民の視点に立った知事です。そのためにはどんどん地域を回ってたくさんの人に会う、話を聞く。私のセールスポイントはフットワーク軽くどこへでも行く行動力と、誰でも分け隔てなく話を聞くことができるところだと思います。

ですから知事室や会議室にこもるのではなく「県内を走り回る知事」を目指したい。

─衆院選以降の経験が大きいのでしょうか

いろんな人に、すべて飛び込みで会いに行き話を聞く。そうやって活動した経験の延長線上に今の考えがあります。何かする時や発言する時、自分の後ろにはそういった人々の声がある、それをしっかり受け止めて何かを産み出すんだ、そんな気持ちが私を支えていると実感しています。

退職金は廃止へ

─具体的な政策についてうかがいたいのですが

まず退職金の廃止、公舎の売却、公用車の見直しをおこないます。これは財政面からだけでなく、知事は県民に身近な存在であるべき、との考えからです。

また行財政改革を進めるために情報開示を徹底的に進めます。福岡県はオンブズマンによる評価で全国最下位だったこともあるほど、この分野で遅れている。予算の成立過程や知事の交際費などできる限り公開する必要があるでしょう。その上で、多くの事業を根本的に見直さないといけない。今のペースで借金を重ねていけば、県の財政は破綻してしまいます。ですから新空港の建設は現状では無理だと考えます。

地域間格差の是正も重要な課題だと思います。福岡市など都市部は現在も人口が増え続けていますが、そこを一歩離れると閉塞感・将来への不安が覆っているのが現実です。伸びるところは伸びているが、疲弊している所はどんどん悪くなっていく。ある企業や産業を誘致するとそれが周辺地域にまで波及効果をもたらす―というのは経済の成長段階の発想です。今は時代が変わりました。過去の発想では問題を解決できません。

─福祉問題については?

介護・医療保険など、自己負担が増えて大変なことになっています。ある程度自治体による財政的援助が必要だと思います。これは各市町村と連携してやっていきたい。

福岡の魅力に磨きを

─知事候補として名前が浮上して以降、マスコミによる取材など、身辺が何かと大変だったようです

こんなに注目されるのは初めての経験でしたから最初は緊張し、戸惑いました。また自宅が苅田町なので、帰宅して家族と会う時間も確かに減りましたね。

─息子さんが昨年生まれたということですが

今、生後8カ月です。写真は携帯電話に入れてあります。どんな時でも、この写真を見ると自然と笑みがこぼれますね(笑)

─最後に、どのような「福岡県」を目指しますか?

福岡は地域ごとに特色があり、多様性をもった本当に魅力的な土地です。それにさらに磨きをかければ、私はここに住みたい、私はこちらに移りたいといった、年代や価値観によって場所を選択できる県になるのではないでしょうか。また県民500万人1人ひとりの夢やチャレンジをきちんと支えることも大切だと思います。

 

一方の現職・麻生氏は「県民党」堅持

新人2人を迎え撃つ形となった現職の麻生渡知事。今回は自民党などが多選を理由に推薦を見送ったため、麻生陣営は早くから政党に頼らない「県民党」を掲げている。民主党が候補擁立を決めた後も、自民党などとの距離は縮まっていない。「今の状態でどうやって選挙を戦うのか」。関係者からは不安の声があがっている。

2月におこなわれたあるベテラン自民党県議の事務所開き。麻生知事の姿はなく、来賓の議員らからも「麻生知事をよろしく」といった言葉は一切出なかった。1月にはこの県議の朝食会に出席し「今の私があるのは先生のおかげ。ぜひもう一期がんばってもらいたい」などと持ち上げていたにもかかわらず、である。

その一方、無所属の若手県議の事務所開きには出席した。「県民党を掲げる知事としては、無所属議員だったら出席していい、という理屈なのかもしれない。だがそんな対応を快く思わない人もいるのでは」とある陣営関係者は不満を口にする。

自民党は県連レベルで推薦なみの支援を決定。だが、県議と市議の間では微妙な温度差がある。特に大票田である福岡市での足並みはそろっていないのが現状。「選挙の戦い方を知っている人間が陣営にいない。これまで政党におんぶに抱っこだったから、仕方ないかもしれないが」と話す関係者もおり「このままでは前回得票数(約116万票)を下回るのではないか」との声も聞かれる。

「知事は3期12年の実績に相当の自信を持っている。これまでの政党丸抱えの選挙ではなく、県民党を称することで、今回の選挙を通じて純粋に自分のことを県民に評価してもらいたいと思っているのではないか」とある関係者。「だが、福岡・北九州の両市長選で民主党が連勝しているのが現実。とてもじゃないが、そんなきれい事ではすまない状況なんだが・・」

県民党を掲げそれに固執する知事の判断が吉と出るか凶と出るか。