「自動車アイランド」九州 福岡、北部九州中心に生産の一大拠点へ [2007年2月15日18:19更新]

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(07年2月号掲載) 

「日本の自動車の生産地は?」と聞かれれば、多くの人が中京地区・東海地区を思い浮かべるだろう。しかし「福岡・北部九州」と答える人はあまりいないのではないか。03年度の福岡県内における乗用車生産台数は約82万台で、愛知県・静岡県に次いで全国第3位。06年度には生産台数100万を達成、07~08年度には静岡県を抜いて2位に踊り出る見通しだ。

全国シェアの10%を占め、大市場を抱えるアジア各国への生産・輸出拠点として将来を期待される北部九州。福岡県を中心に九州全県が連携して「自動車アイランド」を目指す一方、「九州=自動車」とのイメージを一般に浸透させるための取り組みもおこなっている。



 

ダットサンなどの懐かしい車からSF映画に登場しそうな近未来カー。F1用レーシングカーの試乗には行列ができた。

今年1月、太宰府市の九州国立博物館で開催された「クルマの歴史と未来展」(写真上)は家族連れや車ファンで溢れ返り、博物館としては異例の熱気に包まれた。

「自動車生産100万台達成を記念するイベントとして、最初は天神周辺の屋外での開催を考えていましたが、1月という寒い時期なので集客が厳しいかな、と。そんな時に博物館ではどうかということで先方に相談したところ、快く承知していただきました」と話すのは福岡県自動車産業振興室の石井和彦課長補佐。「自動車生産地としての福岡」は一般にはまだまだ浸透していない、なんとか多くの人に知ってもらいたい―との狙いがあった。

11日間という短い期間に、県内外から展示会を訪れたのは計約9万4000人。特に14日の日曜日には約1万8000人が訪れ、博物館開館直後に次ぐ人出だったという。「目的は十二分に達成されました」と石井課長補佐はホクホク顔だ。

目標は“200万台”へ

「この調子で行くと150万台は予想より早期に実現できそう。『目標を200万台にしては』という声もある。北部九州は自動車生産の一大拠点としてますます発展していく」。年明け早々、ある会合でこう語る麻生渡知事の口調は自信に溢れていた。

根拠はある。02年度に掲げた「北部九州自動車100万台生産拠点構想」はその達成を5年後の07年度に想定していたが、生産は順調に伸びて1年前倒しで達成し、昨年8月に目標を150万台に上方修正した。過去の実績からみると、現在県内にある自動車メーカー各社工場の生産能力はすでに150万台を越えている。だから目標とするなら200万台―というわけだ。

今月に入って、日産自動車グループの日産車体(神奈川県平塚市)が九州工場内に最新鋭の車両組立工場を新設することを発表した。新工場の生産能力は約12万台で、九州工場全体の生産能力は計62万台に達する見通し。同グループの国内生産能力の約4割を占めるという。これを受けて麻生知事は09年度としていた150万台生産の達成目標年を08年度に前倒しすることを表明。まさに「200万台」という数字が現実味を帯びてきた―といえそうだ。

九州7県が連携

北部九州での自動車生産は1975年、日産自動車が苅田町に九州工場を設立したことに始まる。92年にトヨタ自動車九州が宮田工場で、2005年に苅田エンジン工場で生産を開始。04年にはダイハツ九州が大分県中津市で生産を開始し、さらに久留米市にエンジン工場を建設する予定で08年度中の稼動を目指している。

現在3社の工場では計約1万3500人の従業員が働いているほか、工場の進出にともない部品関連工場なども九州に移転。さらに高速道路や港湾などインフラ整備が進み、雇用拡大や税収増といった、地元に対する経済効果は計り知れないものとなった。

昨年10月に開かれた九州地方知事会では、九州7県による「九州自動車産業振興連携会議」を設置することを決定、九州が一丸となって人材育成・技術支援等に取り組んでいくことになった。これまでの連携会議は九州北部4県(福岡・佐賀・熊本・大分)で構成されていたが、今後は南部九州も含めることになりまさに「自動車アイランド」へ向けての新たなスタートといえる。

自動車産業進出の背景には、質の高い労働力が得やすいことと、アジアに極めて近いという立地上の特長がある。特に、多くの人口を抱え急激な経済発展を続ける中国・インドなどで今後自動車需要が高まることが予想される。現在は生産される車の多くが北米向けだが、北部九州は将来の巨大マーケットにもっとも近いわけで、今後はアジア向けの輸出も伸びるとみられる。

部品調達率向上が課題

150万台生産の早期達成へ向けた課題の1つは、地元での部品調達率の向上。自動車は約3万点の部品からなるといわれ、現在九州各工場の地元からの部品調達率は約50%程度。調達に関わる物流コストを抑えるために、これを70%まで引き上げるというのが目標だ。そのためには高い技術力を備えた部品産業の集積を図る必要があり、大学などの研究機関と連携した人材育成・技術支援が不可欠だ。

さらに正規社員と非正規・パート社員との給与格差の問題がある。急激な産業の集積と麻生知事の言う「雇用8万人創出の達成」の裏で、地元採用の従業員の間で格差に対する不満が高まっているといわれる。知事は先月、会合でこの問題に触れ「今後は格差の是正を進めていきたい」と話し、解消へ向け努力することを明言している。

産学官が一体となってこれらの課題を乗り越え、最先端の技術と地域全体によるバックアップ体制が整った時、九州が世界に名だたる「自動車アイランド」となる時代が来るのかもしれない。