新北九州市長に北橋氏 福岡に続き民主候補勝利 [2007年2月15日14:57更新]

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(07年2月号掲載) 

2月4日投開票の北九州市長選で、前衆院議員の北橋健治氏(民主・社民・国民新党推薦)が、元国土交通省局長の柴田高博氏(自民・公明推薦)、元北九州市立大教授の三輪俊和氏(共産推薦)を破って初当選した。

5期20年勤めた前市長・末吉興一氏の引退を受け、北橋氏ら3名が激しい選挙戦を展開したが、昨年11月の福岡市長選での吉田宏氏に続き民主党推薦候補が勝利を収めた。

1月の宮崎県知事選も含め九州の首長選で自民・公明が推す候補が3連敗したことになる。民主は県内2つの政令市長ポストを抑え、4月の知事選への独自候補擁立への動きも活発化。擁立が決定すればすでに出馬を表明している現職麻生渡氏は厳しい戦いを迫られそうだ。



 

小倉北区にある北橋氏の選挙事務所は、吉報を待つ支援者や運動員でごった返していた。投票が締め切られた午後8時すぎから、民放各社が次々と北橋氏の当選確実をテロップで速報する。午後9時すぎに本人が支援者らにもみくちゃにされながら登場。拍手と歓声が渦巻く中、感極まった表情の北橋氏は何度も頭を下げる。「人に優しいハートフルな北九州市を実現するために、市民と同じ目線で市政運営に当たります」。歓喜に沸く支援者を前にあらためて宣言した(写真上)

今回の選挙は、衆院議員を6期20年務め知名度抜群の北橋氏を、前市長の末吉氏と同じ建設官僚出身の柴田氏がどこまで追い上げるかに注目が集まった。これまで労使一体となって陣営を支えてきた新日鉄八幡などの企業が柴田氏支持に回るなどの逆風をはね退け、地盤である福岡9区(八幡東区・八幡西区など)の支持層を着実にまとめた北橋陣営に対し、企業を中心に知名度アップを図った柴田陣営だったが、今1歩及ばなかった。

戦略転換、北橋氏逃げ切る

昨年夏に出馬表明した北橋氏は当初「末吉市政の後継者は私」と、これまでの市政を継承するかのような発言もあった。選挙のたびに末吉氏を支援してきたこと、評価の高かった同氏の行政手腕を意識していたことが背景にあったようだ。しかし、官僚出身の柴田氏が対抗馬として名乗りを挙げると戦略を一変。“箱モノ” 建設中心の末吉市政を批判しつつ「草の根運動」「市民党」を掲げ、福祉や教育の充実を訴えた。結果的にはこれが奏功した。

草の根とはいいつつも、活動の中心は9区の組合などの団体回りや集会で、本人が街頭に立つことはほとんどなかった。これまでの国政選挙と同じ手法に、陣営内部からも「無党派層を意識して(知名度の低い)10区での活動を増やすべき」などの声が上がった。結局、小倉北区・南区などで本格的に街宣活動を始めたのは1月半ばになってから。しかし選挙戦終盤でも「いくら街頭演説しても手ごたえがない」(運動員)という状態だったという。「もし負けたら明らかな判断ミス」と漏らす陣営関係者もいた。ところが、フタをあけてみれば門司区以外の全区で柴田氏の得票を上回る結果に。ある運動員は「9区の票はがっちり固めた。しかし正直言って10区でなぜこんなに票が取れたのかわからない」と首をかしげる。

ボロボロの柴田陣営

「国政選挙なみの陣容を敷いた」(自民党関係者)という柴田陣営。しかし、実態はどうだったか。選対事務所は市役所のOBが多く、いわば選挙の素人。頼るべき地元議員の動きはなかなか伝わってこず「一枚岩という状況には程遠い」「知名度が思うように上がらない」と焦りの声ばかりが聞こえてきた。

告示後には自民国会議員秘書数十人が北九州入り。最後のてこ入れを期待されたが、この議員秘書団に対して「サウナや焼肉店でくつろいでいる」「マンガを読んだりして仕事をしない」などの批判が陣営から漏れ伝わってきた。

さらには「(9区で北橋氏と衆院選挙を戦ってきた)国会議員が相手の応援に回った」との話も党内部から出る始末。閣僚の「産む機械発言」など逆風も吹く中、このような状態で厳しい選挙を戦い抜けるはずがない。メディアの出口調査では自民支持層の3割が北橋氏に流れたというが、それも仕方なかろう。挙句の果てに「タマ(候補)が悪すぎた」(自民党関係者)といわれては、あまりに柴田氏に気の毒というものだ。

「脱官僚」「脱開発」へ加速

当初の「柴田氏有利」との予想を覆した北橋陣営。その要因の1つに末吉市政が思ったほど市民に評価されていなかったことが挙げられる。

国とのパイプを存分に活かして次々と大型事業を展開し「鉄冷え」の北九州市を活性化させた末吉氏。その手腕は全国的に知れ渡っていた。だがコムシティの破綻や生活保護を断られた男性が孤独死した問題など「官僚主導行政の限界」ともいえる出来事が相次ぎ、選挙期間中にメディア各社がおこなった世論調査では末吉市政に対する評価は賛否半ばしていた。

このような状況では、いくら自民・公明と地元企業・財界を巻き込んだとはいえ、知名度の低い元建設官僚では無党派層の獲得は難しかった。結果、北橋氏が「箱モノ行政からの脱却」「福祉や教育の充実」を求める市民の受け皿となったといえる。

福岡市長選・宮崎県知事選に続く、北九州での自民候補の敗北。「今市民が求めているものは何か」を如実に示した結果であり、確実に「脱官僚」「脱開発」への流れが加速していることを示している。これから控える統一地方選・県知事選・参議院選への影響は極めて大きい。

 

民主、知事選にも候補擁立か

民主党福岡県連は5日、福岡知事選への対応を協議した。民主は候補擁立について結論を先延ばしにしてきたが、福岡・北九州と2つの政令市長を抑えた形となり、あらためて独自候補擁立論が高まったことを受けたもの。しかし結論は出ず、10日に再度会合が持たれる。

民主は前回、4選へ向けてすでに出馬を表明している現職の麻生渡知事(67)を推した。だが今回、両政令市長選で勝利を収めたことで、「今こそ変革のチャンス」「有権者に選択肢を提示しなければ」とする、若手が中心の 主戦派 の声が一段と高まった。

これに対し、麻生氏を推した県議団の一部は「麻生県政を評価している」などとする“慎重派”だ。これまで総与党体制だっただけに、昨年末からの急激な変化に対応できるだけの力がないのが実状といえる。一部には「主戦派は県議らの発言力がこれ以上増さないよう、知事選で力が削がれることを狙っている」という冷ややかな見方もあり