おから再生事業 「見切り発車」 明らかに(1) [2008年12月10日10:03更新]

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(08年11月号掲載) 

損賠請求裁判で 窮地に立つ北九州市

北九州食品リサイクル協同組合おからリサイクル事業を主導した北九州市が、窮地に立たされている。「北九州食品リサイクル協同組合」(飯田秀実代表)が「新日本製鉄」(東京)などを相手取って起こした損害賠償請求訴訟(本紙6月号で既報)で、機械を製造した「異島電設」(同市)が、おから乾燥機はまだ開発途中だった事を明らかに。

また予算議決の後に組合が設立されていたことも判明、市が推進するエコタウン事業のために「見切り発車」していた可能性が高まったからだ。

法廷で今後、組合設立前後の経緯に関する事実がさらに明らかになれば、事業の本質と市・議会の責任が問われることになるのは確実。解決へ向け早急な取り組みが望まれる。



 

おからリサイクルは、豆腐の製造過程で出るおからを乾燥させてパンの原料などに再生させる事業。豆腐店など15社が01年、協同組合(写真)を設立し農水省から2億1100万円、市から1055万円の補助金を受け、工場を建設した。 

ところが05年5月、おから乾燥機1機に破裂事故が発生。すべての機械が労働安全衛生法に違反していることがわかり、工場は操業停止に追い込まれた。  

組合は「工場や機械を建設、製造した新日鉄側に責任がある」などとして約6億円の損害賠償を求め昨年提訴、現在係争中だ。

乾燥機は開発中!?    

この裁判の過程で、事業開始時の経緯や新事実が次々と明らかになっている。 

まず破裂した乾燥機だ。補助金を申請するために農水省に提出した文書(01年)に記載された乾燥機の処理能力と、産廃処理業の許可を得るために組合が市に出した文書に記載されたものが食い違っていたことは以前述べた。これについて乾燥機を製造した異島電設は「本件契約時にはおから乾燥機はいまだ開発中であって、具体的な処理能力は契約の内容となっていなかった」(7月9日付準備書面)と主張。機械が完成していないにもかかわらず、事業スタートに踏み切ったわけだ。 

機械は新日鉄が元請けとなり下請けの異島電設から購入、組合側に引き渡す契約を結んでいた。新日鉄エンジニアリング(分社化によって事業を継承)はこの点について「乾燥機の具体的内容やノウハウなどまったく知らなかった」として「責任は異島電設が直接負うべき」(4月10日付準備書面)と主張している。  

組合設立前に予算  

組合への補助金支出が北九州市議会で議決されたのは00年12月8日。同20日には補助金割り当ての内示通知を受け翌01年、国に補助金を申請した。 

だがリサイクル組合の設立が登記されたのは01年1月23日。組合が設立される1カ月以上前に補助金を支出することが決まっていたことになる。 

設立前、組合の幹部候補だった4人が初めて一同に会したのは議決の3日前。組合の専務理事となった異島電設社長は、別の裁判で「会長と専務理事は行政指導を受けて就任した」と証言している。 

つまり、北九州市はこうした経緯を把握しているどころか、指導的役割を果たしていたのである。  

契約書などはバックデート  

さらに新日鉄側は契約書などについて「バックデート(契約などの際に日付を空欄にしておき、後で都合のよい日付を書き入れる)していた」と明らかにした。 

7月11日付準備書面によると、新日鉄と組合が結んだ工事請負契約書(01年4月1日付)、また新日鉄・組合・異島電設3者で交わした請負承諾書(同月2日付)と覚書き(日付空欄)について「契約書や承諾書はいずれも工事着工後に締結されたもの」「実際の工事の着工日に合わせた日付を記載した」「実際に契約を結んだのは同年6月下旬から7月初旬にかけて」と述べている。 

バックデートすることを決めたのは新日鉄の判断なのか、あるいは市の関与・指示があったのか? 今後の裁判が注目される。