本物の千鳥饅頭 [2012年8月17日17:17更新]

タグで検索→ |

noimage

福岡県民新聞68号掲載記事

佐賀が発祥の老舗菓子舗「千鳥屋」は、石炭景気に沸く飯塚市で有名になり、中央区天神に本店を構え、東京、大阪に進出し今日の基礎を築いた。その後中興の祖、原田ツユ氏が亡くなり、5男(4男は夭折)3女の遺産を巡る激しい争いが、福博財界の話題となった。

天神の本店を処分し裁判は一段落したが、福岡の千鳥屋を経営していた光博氏が病に倒れ、ドイツ出身の妻ウルズラ氏と3人の息子たちが事業を継承。ところが経営方針を巡って長男と次男が衝突し、三男と母が長男サイドに立ち、臨時役員会で次男の役員解任となった。

千鳥屋で最も有名な商品は千鳥の焼印を押した千鳥饅頭だ。東京、大阪、福岡、飯塚はそれぞれ別法人の経営、見た目は同じ千鳥饅頭でも、材料や製法が若干異なるせいか、食べ比べると味が少し違うと、指摘する昔ながらのファンもいる。

名物や銘菓は元々の品質を守っていても、食する側の嗜好が変わり、好まれなくなることがよくある。新商品がたまたまヒットしてブームになっても、大部分が短命で、息の長い商品に成長するのは万に一つも現れない。例えばデパ地下の食品売り場で行列が出来ていた商品でも、数ヵ月後には行列が無くなって、別の商品が売られているのはよくあること。

千鳥饅頭を販売している4社は、ともに表向き問題は無いように見えるが、それぞれが何らかの問題を抱えている。特に福岡の㈱千鳥饅頭総本舗は、平成14年から税理士を巻き込んで、決算操作を行ってきただけに、資金繰りは非常に厳しいようだ。相続税が尾を引いているためで、メイン銀行役員は相談を受け承知しているが、他の金融機関は知らされておらず、今後厳しい局面を迎えることになるだろう。

新しく代表に就任した長男は、故・光博氏が健在な時に約1億円を投資し、チョコレート専門店を東京で開設した。だが経営はうまくいかず、さらに約1億円の資金が流出し最終的に撤退となったようだ。

社長就任後に新設した店舗でも、経営コンサルタントのアドバイスを受けているとのことだが、事前に市場調査したのか訝るような立地であり、経営手腕を疑問視する取引先は多い。

東京と大阪の千鳥屋とは競合していない。だが福岡には2系列の千鳥屋が存在しているだけに、ポイントカードなどのサービス面で客が戸惑っているのは事実。商圏が重なる福岡と飯塚で、本家争いが過熱することは十分考えられる。