何時から騙そうとした [2012年8月17日17:19更新]

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AIJ投資顧問事件を筆頭に、色々な詐欺事件がマスコミで報道されているが、プロの詐欺師が最初から多くの人を騙そうとするのは稀だ。立派な舞台と高価な小道具を準備し、相手が勝手に錯覚する役者を用意しても、仕掛ける場所が多くなれば何処かでボロが出るからだ。だが楽をして儲けようとした考えが上手くいき過ぎ、有頂天になって金集めに走った結果、詐欺罪など刑事事件で逮捕というケースは少なくない。

小さなビル清掃会社から出発し、社長自ら作業員と一緒に働いていた丸美が陥ったのもそうしたケース。ある日佐賀銀行の役員が、倒産した地場デベロッパー「すまい」の管理会社買収を持ち掛けて来た。「すまい」の投資用マンションは利便性に優れよく売れており、管理戸数は2万戸を超えていた。管理戸数が多ければ預かる敷金も数億円単位となる。これを資金繰りが厳しくなっていた親会社の「すまい」が見逃すはずも無く、流用するまでに時間は掛からなかった。

賃貸マンションから退去者が出て敷金を返還しても、数カ月後には新しい入居者の敷金で穴埋め出来る。管理するマンション入居者が、一斉に退去することはあり得ず、親会社の流用は表沙汰にならなかった。佐賀銀行役員は当然これを知っており、流用分を丸美に融資することで決着。「すまい」の管理部門を手にした丸美は一挙に売上を伸ばし、他の銀行が食指を動かすほどの将来性ある企業に大化けした。

だが丸美がつまずいたのも、「すまい」の管理物件の1つ、会員制ホテルだった。丸美はこのホテルを軌道に乗せるため会員拡大を図った。原価不要の会員権は販売すればするほど、面白いように現金が入る。霧島に加えて、熊本菊南と由布院でもホテルを購入、さらに投資ファンドの運用も始めた。濡れ手に粟の錬金術を習得した代表は、湯水のように入ってくる現金に酔いしれた。

丸美も管理業務と分譲マンション開発に専念していたが、会員権販売に手を染めてからは、楽して儲かるビジネスにのめり込み、その結果、多くの人を騙した罪で逮捕された。丸美にマンション管理を委託していた多くの管理組合は、積立金が焦付き被害が拡大した。  先月号の日本トレイドも、当初はテーマパーク建設を真剣に考えていたが、出資金が瞬く間に数十億円集まり、自社株が未公開株として販売され現金が集まることを知って錬金術に走り、事実上破綻状態となった。

しかしこれらを詐欺として刑事事件化するには、いつ騙そうとし始めたかの判断が難しく、弁護士の腕一つに掛かっているといって良いだろう。