裏から表への難しさ [2012年12月17日15:19更新]

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九州ゼネコンではトップグループの㈱さとうベネックだったが、11月2日東京地裁から破産手続き開始の決定を受けた。同社は昨年末から、オーナーである再生ファンドが企業売却を各方面に打診していたが、最終的には約15億円で交渉がまとまり、金融業の金主として財を成し、東京や福岡の中洲に多数のビルを所有する、ダイセンビルディング㈱の関連会社が購入した。買収資金は投資ファンドからの短期借入で全額を賄い、返済はさとうベネックの手持資金を流用する手法で、金融業者特有の本性を早々と露見させた。しかし建設業というゼネコンの仕事は、受注から代金を回収するまで長期間に亘るもので、余りにも性急な資金収奪が同社を破綻に導き、かえって自分の手で首を絞める結果になった。

オーナーのダイセンビルディングはその間、高額の約束手形を発行、市中金融筋からの問い合わせも増え、この点でも命取りになった。その収拾策として、所有するビルを売却し資金を捻出するようだが、既に同社の不動産リストを、怪しげなブローカーが持ちまわっている形跡があり、噂が噂を呼んでいる。東京銀座に所有するビルは、一等地だけに希望者も多いだろうが、福岡のビルは、問題が多いと関係者は語っている。

一度裏帳簿で入った現金を、表の帳簿に出すのは至難の業で、一歩間違えば税務署に目を付けられる。警察の目は誤魔化せても、税務署を騙すのは非常に難しく、どの様に処分するのか、お手並み拝見と見守りたい。多くの庶民を悪徳金融で泣かせて手に入れたビルだけに、安く買っても怨念が籠もっており、買おうと思っている者も用心することだ。

かつて西日本一の歓楽街を誇った中洲も、一歩裏通りに入ると客の姿は消え、客引きだけが増えている。官官接待の廃止と飲酒運転事故を境に、商売の方法も昔と変わり、背広姿のサラリーマンも減り、飲食店の形態も随分変化している。景気の波が企業にも押し寄せ、広告宣伝費の経費削減から、ネオンの灯も一つ消え二つ消え、骨組みだけの鉄骨が残り、川面に映す風景も寂しくなっている。

年末を控え追い打ちをかけるように、福岡県警の暴力団取り締まりも厳しさを増しており、表向きには暴力団が中洲から排除された印象がある。だが関連と思われる事件も起きており、標章問題が大きな波紋を呼んでいるのも事実だ。夏以降に閉めた店も多いが、年明けには数百軒の閉店予備軍が控えており、家賃なども下がっている。そんな状況下でのビル売却は、かなり困難になるものと、厳しい見方をする関係者は多い。