【お耳拝借!】排泄ケアは心のケア [2009年7月10日11:13更新]

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快適環境創造フォーラムより 「ニシキ」福岡支店長 江副正典氏(09年6月号掲載)

「ニシキ」福岡支店長 江副正典氏現在、赤ちゃんなどに使用されているおむつは使い捨ての、いわゆる紙おむつが主流です。  

それではみなさん、年間どれくらいの量が生産、消費されているかご存じでしょうか。実は、ベビー用が約60億枚、成人用が約45億枚。昨今の少子高齢化の傾向を反映してここ10数年、成人用がぐんぐんと伸びているのが実情なんです。 

超高齢化社会に突入して介護保険制度も始まった現在、お年寄りや介護者など多くの人にとって排泄の問題は切実です。しかし事の性質上、取り上げにくい、他人に話しづらいのが現実ではないでしょうか。 

今日はそんな現状や問題点を取り上げ、私ども「ニシキ」(福岡市博多区)が排泄ケアの基本としている考え方をご紹介させていただきたいと思います。



おむつの変遷  

私どもの会社は1921(大正10)年の創業以来、赤ちゃんのおむつやカバーなどを提供して参りました。 最初は布おむつで、汚れたら洗って乾かし、何度も使う。これはみなさんも当然ご存じと思います。

それが、高分子保水吸収体が開発されたことで使い捨ての紙おむつが誕生し、日本には80年前後から、パンパースなどのアメリカ製品が輸入され始めました。 

洗濯の手間が省け、外出時や夜間の使用にも便利。ですからほどなく一般家庭や病院に普及しました。さらに現在では経済性や環境への配慮から、紙おむつから紙パッドだけ取りはずして替えることができるタイプが主流となっています。 

これに対して成人用のおむつは、60年代から一般に普及するようになりました。基本的にはベビー用の布おむつとカバーを転用したもので、利用者も寝たきりの状態を前提としたものでした。

その後、紙おむつが普及し立って歩いたりといった自立性が高まりました。おむつの変化が当時の介護の形を変えたと言えるでしょう。

「わしは一生このままか」  

成人用おむつの需要は90年代後半から急激に伸びてきました。これは2000年に始まった介護保険制度と関連しています。 

それまでは主に寝たきりの高齢者が使っていたこともあり、お世話する人の都合が優先される「本人不在の介護」でした。漏らさないためにさらにおむつを重ねる。ところが最近は意識もはっきりした利用者が増え、そうした介護のあり方に限界が生じてきています。 

ある介護施設の男性の例です。おむつをするのを嫌がり、施設の職員に暴言を吐くなどコミュニケーションが取れない。おむつを替えようとすると「わしは一生このままか?」

本人主体の排泄ケアへ  

頑健だった人ほど、おむつを着ける精神的負担は大きい。そういう姿を他人に見られることを恥ずかしいと感じる。「これまでずっと頑張ってきたのに、人生の最後はおむつでぐるぐる巻きか」。こうしたやるせない思いが粗暴な態度という形で現れたんですね。 

この男性の場合は、伸縮性のよい布パンツに紙パッドを付けることで対応しました。その結果、粗暴な態度も改まって優しい言葉を掛けるようになり、職員も感動しているそうです。 

こういう事が言えると思います。これまでの排泄のケアは「漏らさないこと」に重点が置かれてきた。しかしこれからは、使う人の精神的な負担を軽くすることにこそ配慮する必要があるのではないか。介護者主体から本人主体へと変えていくべきではないのか。

おむつは下着の延長  

私どもが成人を対象として販売している商品は、布パンツに紙パッドを組み合わせた物が主流。見た目には普通の下着と変わらないので多くの方に受け入れやすくなっています。また外出するのにも抵抗感が少ないと思います。見た目も着心地もあくまで下着の延長─これが、私どもの考え方です。 

おむつが必要なのは決して高齢者だけではありません。生まれつき機能に障害がある方や、事故などで突然必要になることも。事情は十人十色、それぞれに対応できるようバリエーションも増やしてきました。 

介護の3つの基本は「入浴、食事、排泄」。それぞれについて質を向上させていく必要がありますが、特に排泄は「人間としての尊厳」に関わる重要な問題。習慣を変えるのはなかなか難しいですが、人知れず悩まれている方も多いはずです。

「排泄ケアは心のケア」。この言葉を肝に銘じ、これからも皆さんの要望に応えていくことが私どもの使命だと思っています。

★ニシキのHPはこちら

 

【江副正典】<えぞえ・まさのり>
1953年、小郡市生(55歳) 同市在住
78年、ニシキ入社。介護施設で手品を披露するなど、笑いの普及活動にも努めている。 

【快適環境創造フォーラム】  
快適な環境づくりを目指し健康産業やデザイナー、建築家など様々な分野の専門家らが参加する交流会

★本紙があらためて取材、再構成しています〈随時掲載〉