世代交代でも福岡県自民党完勝!夏の参院選、麻生太郎副総理の野望は? [2013年2月19日16:56更新]

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29年ぶりの師走選挙となった衆院選は、自民党が単独で絶対安定多数を確保する294議席の圧勝。福岡県内でも、民主候補が比例復活すら許されない沈没ぶりの一方、自民は公認・推薦候補が全員当選し、比例2人を含め国会議員13人を数える〝完勝〟。また2、3、7区では山崎拓元副総裁、太田誠一元農相、古賀誠元幹事長と党要職を務めたベテランの引退が相次ぎ、世代交代も印象づけた。だが大勝の陰に隠れた事実も露呈。たとえば自民の比例票が目減りしている実態。これに派閥バランスの変化、今夏の参院選に向けた思惑が交差し、自民県連内部からは早くも不協和音の軋みが漏れ始めている。

圧勝の内実

「政策、実績、人柄。何もかも吹っ飛ばされた」。投票結果が開票された12月16日夜、民主県連でつぶやいた吉村敏男幹事長の言葉がすべてを物語る。
逆に言えば、圧倒的な選挙結果ではあったが、09年政権交代選挙で民主党がそうだったように、自民党の公約・政策が熱狂的に支持されたわけではない。後述するように、自民党の得票率はむしろ低下した。ではなぜか。一言で言えば、非自民票が第三極に分散し、民主批判で空いたエアポケットに自民が滑り込んだ結果、といえようか。  象徴的なのが福岡1区だった。
「1区で悲願だった自民の錦の御旗を掲げることができた」。麻生太郎元首相の見守る中、自民公認の井上貴博氏は喜色満面だったが、公認に決まったのは公示5日前。超短期戦とあって、当たり前のはずだった公明との選挙協力もできずじまい。報道各社の世論調査で序盤から「民主・松本龍氏をリード」と一斉に報じられたが、公示後に慌てて発足した選対本部の幹部を「まだ何もしとらんのに…」とア然とさせた。
この選対も、井上氏と公認を争った新開裕司氏(比例九州で当選)寄りの議員が多数を占める有様。元々が新開氏は東区、井上氏は博多区を地盤とし、井上氏が東区を回り始めたのも選挙戦中盤から。マイク納めの15日も、井上選対では「集会に新開氏を呼ぶかどうか」で揉め、結局は呼ばずじまい。さきの選対幹部はこう漏らす。  「後援会名簿も作れん、博多以外で知名度もない、同じ党内でしこりは残るわ、公明とも協力しないわ。(松本)龍さんが逆風と放言問題で自滅したからよかったけど、普通だったら選挙になってない。井上は麻生さんに泣きついて無理矢理公認に割り込んでトクしたよね。だって、井上でなくたって自民なら誰でもよかったんだから」。

比例は頭打ち
別の角度から見てみよう。比例得票の分析である。
今回の福岡県内の自民比例票は64万7000票、得票率は3割に満たない28・17%。前回(78万9000票、得票率28・68%)より約14万票減らした。比例1位だった前々回(05年)には91万5000票(得票率34・80%)だったから、実に3割、30万票を失っていることになる。
一方で民主は103万票の前回から、3分の1になる33万票(得票率14・47%)。では自民、民主が減らした票はどこに行ったのか。
第3極である。最も分かりやすいのが、初参戦の維新。公明(前回比7・2万票減の38・5万票、得票率16・74%)を上回る44・9万票(得票率19・53%)を得た。比例では堂々の県内第2党である。みんなも18・2万票(得票率7・92%)と、一時の埋没ムードからすれば健闘した。これらの数字を見ると、非自民の受け皿にこそなれなかったものの、行き場のない元・民主票が流れ着いた先となったことは十分に推測ができる。

麻生という火種
こうして昨年末の選挙を振り返ったのは、衆院選結果の中身が今年の参院選につながるからだ。年末に発足した第二次安倍内閣が、「国防軍創設」「今度こそ改憲」と話題を振りまいた解散前後とは一転して「まずは15カ月予算を」と堅実な船出に終始した理由はそこにある。原発再稼働や竹島・尖閣問題、普天間問題など致命傷を負いかねない政治課題は山積している。衆参両院を制するまでは安全運転─これが安倍政権の共通認識だ。
その中で要になるのが麻生太郎氏の副総理・財務・金融担当相の起用といわれる。ある党首脳は「総裁選の単なる論功行賞と見られがちだが、外相希望だった麻生さんを内政優先の財務相に起用したのは理由がある。重要閣僚として総理の言えないことを言う、観測気球を上げる、ガス抜きをする…。発信力への期待だね」と明かす。  麻生氏は県内でも〝厄介な火種〟となりつつある。元々「影響力の薄い福博への進出を狙っていた」といわれる麻生氏。今回、1区で井上氏を当選させたほか、5区の原田義昭氏、比例の西川京子氏が加わり、麻生派(為公会)国会議員は岸田派(旧古賀派)と並んで5人となる見通しで、存在感を一気に増した。
今夏の参院選を巡っても物議を醸している。今年7月の参院選福岡選挙区の改選数は2。自民党はこれまで「指定席1」を守り、直近3回でも民主党と議席を分け合ってきた。現職の松山政司氏の公認は昨夏に決まったのだが、衆院選の大勝に気をよくしたのか、「参院も独占できるじゃねえか」と言ったというのだ。
県連幹部は「2議席とるには最低でも120万票要る。それをきれいに分けられるのか。前回(10年)でも77万票しか取ってないんだ」と一笑に付すのだが、既に巷間、麻生派県議の名前が浮上している。
参院選まであと半年。2013年も波乱含みで始まった。