地域に支えられて10周年 城南区樋井川「ビガーハウス」 [2009年9月11日09:14更新]

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(09年7月号掲載)

真剣に作業に取り組む仲間たち「障がい者の施設を地域に認知してもらうには、こちらから積極的に出て行くことがとても重要ですね。それで、子どもたちを地域に押し出していくことに力を入れてきました。今年、設立10周年を迎えて、それが少し実ったかな、と思っています」 

福岡市城南区樋井川1丁目にあるNPO(特定非営利活動)法人の知的障がい者多機能型福祉事業所「ビガーハウス(元気が出る家)」の永島悠二所長(61)は語る。 



4月18日に行った設立10周年の記念の催しは、地域の人も130人余り参加して大盛況だった。「記念式典のような形式ばったことはせず、事業所を開放してありのままを見てもらうことにしたんです。そうしたら『豚汁は任せとき』と言って地域の主婦が駆け付けてくれたり、芸達者な知り合いを連れてきてくれたりで、大いに盛り上がりました」 

 

設立は1999年4月。手さぐりの10年だった。永島さんは自身、自閉症の子どもを持つ親だが、初めから福祉事業所の運営を志したわけではなかった。 

当時は子どもが福岡中央養護学校(現・特別支援学校、旧大濠養護学校が移転)高等部に在学中。永島さんはPTA会長として、旧大濠養護学校跡地に養護学校を卒業した子どもたちのための施設を福岡市に要請する運動に携わっていた。 

歴代のPTA会長らの結束もあって、施設は建設されることになった。これが現在の知的障害者通所更生施設「おおほり苑」(中央区鳥飼2丁目)。しかし、完成までに1年はかかる。その間に卒業する子どもたちの受け皿がない。そのため急きょ、立ち上げたのがビガーハウスだという。 

要請運動の事務局長をしていたことから、永島さんが運営の責任者を引き受けることになった。当時、永島さんは大手旅行会社を早期退職したばかり。「この仕事に後半生をかけてみよう」と考えたという。 

設立1年目に、水を注ぐだけでデスク上で四つ葉のクローバーが育つギフト用品を数万個も作る仕事が舞い込んできた。「元々は『おおほり苑』に持ち込まれたものですが、まだ稼働していなかったのでこちらに回ってきた。これは助かりました」。この仕事は現在もビガーハウスを支えている。 

 

仕事の開拓に努力する一方、地域に溶け込むことに力を注いだ。「私自身が地域の役職を積極的に引き受けるだけでなく、市政だよりや公民館だよりの配布に子どもたちと一緒に回ったり、近くの一本松川遊歩道の清掃を行ったり、地域の夏祭や公民館の行事には積極的に参加したり、とにかく子どもたちを地域に押し出すことを心がけました」 

ビガーハウスには現在、18歳から55歳までの20人が通う。これを永島さん以下4人の常勤職員と2人のパート職員で支える。「より地域に密着して地域に役立つ仕事で、何とか子どもたちの給料を上げてやりたい」。永島さんは次の一手を実現する機会をうかがっている。

【ビガーハウス】
福岡市城南区樋井川1-8-31 ℡092-861-4477