視覚障がいの子らに科学の夢を (財)九州先端科学技術研究所 [2010年2月12日10:33更新]

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(10年1月号掲載)

ガスバーナーに点火する子どもたち子どもたちの理科離れ、科学離れが憂慮されているが、視覚障がいのある子どもたちにとっては、実験や観察が必要な理科学習は限りなくハードルが高い。そのため本来、理科や科学への興味を持つ子も、その興味を発展させたり、能力を開発されないままに終わってしまうケースが多い。 

そんな子どもたちに晴眼者と同じように科学の面白さを体験学習できる機会を提供する全国規模のプロジェクトが、福岡市にある財団法人「九州先端科学技術研究所」(略称ISIT)を拠点に始まっている。 

同研究所が提案し、独立行政法人科学技術振興機構の「地域の科学舎推進事業」に採用された「科学へジャンプ・視覚障害者全国ネットワークの構築」プロジェクト(09~11年度)だ。 



 

現在、全国の大学や学校、公的機関、企業、ボランティアなどが視覚障がいの子どもたち向けに支援活動を行っている。

例えば、体の不自由な人たちとの自然観察会(ネイチャー・フィーリング)を行っている自然観察保護協会、視覚障がい者向けのパソコン教室を全国規模で行っている視覚障害者パソコンアシストネットワーク、視覚特別支援学校の教員やOBの視覚障害教育研究会。さらに点字図書の出版や触図の製作、点字教室などを行う点字図書館・ライトハウス、さらに点訳ボランティアも多数活動している。 

こうした団体やボランティアをネットワーク化し、情報の共有や支援を必要とする子どもたちにその情報を届ける活動を組織化しようというのが、同プロジェクトの目的だ。 

 

ISITは1995年、システム情報技術など先端科学の中核的研究所として「福岡ソフトリサーチパーク」(早良区・シーサイドももち)内に設立された。今回のプロジェクトは、九州大学で長年、数式を認識できるOCR(光学読み取り)ソフトの開発や科学技術情報のアクセシビリティに関する研究会などを行ってきた鈴木昌和・九大大学院数理研究院教授や約30年間、盲学校の理科(化学)教師を務め、ネイチャー・フィーリングなどを行ってきた鳥山由子・元筑波大教授がISITの特別研究員として加わって具体化した。 

プロジェクトの内容は、触って学べる地理学習や電流回路を作って調べる実験、火を使う化学実験などの教材開発、視覚障がい者と晴眼者が同時に情報共有できるソフトの開発のほか、科学に興味のある視覚障がいの中高生を対象とした「科学へジャンプ・サマーキャンプ」、指導者向けの養成講座などとなっている。 

サマーキャンプ(定員約30人)は今年8月20日、「阿蘇青少年交流の家」(熊本県)での開催が決まっている。

この地域ミニ版が昨年11月に京都、12月に名古屋で開かれたが、参加した小・中・高校生はガスバーナーを自分で点火して使ったり、動物の骨を触って確かめたり、電流回路の実験に挑戦するなど興味深く取り組んだという。

地域ミニ版は今後も各地で開かれる予定。

【問い合わせ先】ISITプロジェクト推進部
早良区百道浜2-1-22 電話092-852-3510