福岡市長選 現職大敗の原因は? 元陣営関係者に聞く(1) [2010年12月13日09:28更新]

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(10年11月号掲載)

集まった支持者に頭を下げる吉田宏氏(11月14日)11月に行われた福岡市長選で、自民党などが推す新人に大差で破れた吉田宏氏(民主党、国民新党推薦)。

こども病院移転問題を「公約違反」とする市民の反発、推薦をめぐる民主党県連内のゴタゴタ、外交問題などで支持率を下げた菅内閣と民主・・。マスコミはいくつかの敗因を挙げているが、前回選挙で吉田氏を支えた元陣営関係者らはこう口を揃える。「こうなることは最初から予想していた」 

通常であれば問題なく再選される2期目の選挙で、現職が惨敗した原因は何か。元陣営関係者の声を集めた。 



 

「応援してくださった方々には本当に感謝しています」。高島氏の当選確実が報じられた後、涙ぐんで支援者に頭を下げた吉田氏(写真)

拍手に包まれ支援者1人1人と握手して回るその姿を見つめながら、前回選挙で選対本部の幹部を務めた元陣営関係者は静かにこう語った。

「この日が来ることは4年前から分かっていた」 

典型的な泡沫陣営  

前回選挙(06年)で民主党が擁立した吉田氏。だが候補者の選定をめぐっては県連内で意見が割れ、本格的な活動の開始は投開票日の2カ月あまり前、9月上旬にまでずれ込んだ。 

吉田氏が立ち上げた陣営は当初、本人を除けばわずか3人。候補選定がもめた影響で、推薦を決めた後も民主からの人的支援はごくわずかだった。

「典型的な泡沫陣営、これでは勝てるわけがないと思った。吉田氏を推した当時の県連幹事長S県議も『福岡と北九州(市長選、07年2月。元民主衆院議員の北橋健治氏が初当選)のどちらか1つ勝てれば御の字』と漏らしていた」(当時、吉田陣営を担当したマスコミ記者)。 

 

そんな陣営の原動力となったのは「こども病院移転や強引な五輪招致など、市民の声を無視する山崎広太郎市長(当時)の市政、市民不在の市政を何としても変えなければ」との一心だったという。

前出の元陣営幹部は語る。「まず何よりも市民の命や生活を守ることを優先する。そして市民の声を汲み上げて市政に活かす。そんな福岡市が実現できたら素晴らしいと思った」

陣営では「聞きたかけん」「市民の声に心耳を澄ます」とのキャッチフレーズを考案。新聞社出身で政治経験のない吉田氏のことを逆手に取り「市民と同じ目線を持つ市長候補」とアピール、見事に勝利した。 

 

この元幹部は自ら会社を経営しているのだが、吉田市政誕生後は「もし本人から要請があれば、吉田市政を支えるためなら会社を投げ打ってでも─という気持ちは確かにあった」

だが元幹部は吉田氏周辺との間であつれきが生じ、彼が市政に関与することは結局、最後までなかった。

(続く)