お母ちゃんやってます! 子育てママ中央区で奮闘中 市議選出馬へ [2011年2月28日10:50更新]

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(11年1月号掲載)

自宅でママ友と勉強会を開く前田薫子(かおる)さん4月の統一地方選挙まであとわずか、すでに多くの立候補予定者が挨拶回りや街宣活動を始めている。

選挙は一般的に現職が有利、新人は不利とされるが、今回は民主政権の不人気もあってさらにその傾向が強まりそうな状況だ。

そんな中、2人の子どもを抱える「若きお母ちゃん」が福岡市中央区から同市議選に初挑戦する。前田薫子(かおる)さん(33)。「私たち若い世代が政治に参加しなければ議会、そして市政は変わらない」

母親になって感じた思いを市政に反映させたいと、政党や企業・団体に頼らない、地道な活動を展開している。



 

初めての辻立ち(街頭演説)は昨年大晦日深夜、中央区・警固神社前だった。小雪が舞う中でのカウントダウン。新年を迎えたと同時に、行き交う参拝客へ向かって第一声を発した。「お母ちゃん、やってます!」 

保育士だという若い男性をはじめ、幾人かに声を掛けられた。「自分の思いは訴えられた。何となく、自信が付きました」。そういって顔をほころばせる。 

午前4時前に起床、早朝の大濠公園を幟(のぼり)を持って走る。その後は赤坂、六本松、平尾など、人通りの多い交差点や駅前で辻立ち。3才と1才の男の子2人は託児所に預けたり家族や「ママ友」に面倒を見てもらって、街宣活動のための時間を何とかやりくりしている。 

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前田さんは熊本市出身。地元テレビ局の報道記者として活躍し、福岡市内の会社に勤める夫と結婚して転居。福岡放送(FBS)に契約記者として務め、妊娠・出産を機に07年、退職した。 

「児童虐待など、普通の家庭で起こる暗いニュースを見るたびに『自分に何かできないか、何かするべきではないか』という思いが募っていきました」。前田さんは記者時代、同様の事件を取材したこともあったという。「ですが、子どもが生まれてから感じた思いは、当時とはまったく違った。実際に自分が母親になったことで、考え方も変わったんですね」 

夫や両親に「福岡市議選に立候補したい」との意向を伝えたのは昨年夏。だが子ども2人がまだ小さいこともあり、皆一様に難色を示した。悶々とする日々を送っていた時、11月の選挙で若き新市長が誕生した。 

「市政を変えたいという意志を、福岡市民が示したんだな、と。そうであれば、議会も変えないと市政改革は実現できない。今の議会は高齢の方が多く女性も少ない。私たちのような若い世代こそが変えられるんです。だから、家族の反対を押し切ってでも絶対に選挙に出る。市長選は、そう明確に思った大きな転機でした」 

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子ども連れのママ友を自宅に招く。「今の時代、地域のコミュニティーはどうあるべきか」。自らの考えを述べ、率直に意見を交換する勉強会だ(写真)。 

「私たちの親の世代と今とでは、取り巻く環境がまったく変わっています。若い母親が子どもを安心して育てるためには、地域の協力や年輩の方々との連携が不可欠。時代に合った新しい地域コミュニティーのあり方を考えるべきです。例えば、その拠点として公民館を活用できないか、とか」 

少子高齢化が進む日本。若い世代がもっと子どもを産みたいと思える社会、喜びや悩みを分かち合いながら安心して子育てできる社会を目指すために、政治・行政は一体何をするべきなのか。

「待機児童の解消、病気の子どもを預けられる『病児保育』の推進、学童保育の時間や学年の延長、また内容の充実。それから、育児に専念した人でも社会復帰しやすい環境づくりも大切ですよね」 

2児を抱えるお母ちゃんならではの経験や視点、問題意識。それこそが今の市政に欠けているもの─と強調する。「ママ友さんたちの話を聞くと、市政に対する不満や要望はたくさんあるんです。そうした声をたくさん集めたい」 

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FBS記者時代は県政を担当、06年の福岡市長選も取材した。そのため政治関係者には元々知り合いが多い。だが今回の選挙には、政党や企業などに頼らず、わずかな自己資金で臨む─と最初から決めていた。

「市政や議会を変えたいのだから、他と同じやり方をしても仕方がない。私のような、小さな子どもを抱える母親が選挙に出る意味がない」 

子育てを通じて知り合ったママ友や記者時代からの交友関係を基盤に支援の輪を広げて行きたい。インターネットはそのために欠かせない“選挙ツール”。ブログ「かおるんママが行く!」をスタートして半年、アクセス数は少しずつ増えているという。 

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「中央区の選挙は予想がつかない」。多くの政治関係者がこう口をそろえる。それは他の地域と違う特有の事情があるからだ。 

オートロックを備えたマンションが建ち並ぶ中央区。外部から簡単に出入りできないために戸別訪問が難しい。「その上、昼間なかなか会えない単身者や若者が多いなど、有権者の『顔』が見えにくい」(同区選出のある議員)。 

一方で、その時々における中央政界の動きや全国的な風潮に敏感だ。民主の風が吹き荒れた前回市議選では、同党の若手新人がトップ当選。昨年の参院選ではみんなの党の公認候補が多くの票を集めた。 

そんな中央区選出の市議は7人。厳しい戦いなのは間違いないが、若きお母ちゃんが残りわずかな期間でどれだけ支持を得られるのか、注目される。