(11年2月号掲載) マル秘文書は市が作成したもので、事業経緯や想定される会議の進行手順などが書かれている。 「病院機能、経営形態などに議論が広がらないよう留意」「一部の反対者が自説を曲げない場合は、各論併記となることもやむをえない。ただし、その場合、多数意見がどれか分かるように集約」といった文言が記されている。 これを渡していたのは、反対派代表と市民委員2人を除く8人の委員。それだけに「議論を誘導しようとしたのではないか」と会議のあり方そのものに疑念を生じさせる結果となった。 福岡市によると、文書は議論の叩き台とすることを目的に作成。あくまで内部文書であるとの認識で、外部に漏らさないようにとの意図でマル秘と表記した。 調査委員は全員が同時に決まったわけではなく1月12~28日にかけて順次選ばれたため、文書を配布する時期にも時間差ができた。渡せなかった反対派代表ら3人に対しては口頭説明で十分だと判断したという。 市は「軽率だった」と認めているが、高島市長はマスコミからの確認取材で初めて知ったといい、定例記者会見で「昨夜は悔しくて眠れなかった」などと激怒。文書を市のHPで公開するとともに、自身が出演し謝罪する映像も流した。 情報公開の徹底は、政策決定過程の透明性を重視する高島市政のいわば「1丁目1番地」。本紙に対しても「重要なのはプロセス」と語っていた市長だが、マル秘文書問題で役所の体質の現実を、あらためて思い知ったことだろう。 今回の調査委員会は「あくまで人工島移転を決定するにいたった過程を検証するのが主たる目的。移転計画の是非を直接的に議論する場ではない」(福岡市)。 とは言えその決定過程に問題があったのは誰が見ても明白。その象徴が、現地建て替え費用の水増し問題だ。 この問題はこども病院を現在地で建て替えた場合の費用の試算について、市が委託したコンサルタント会社が約85億円としたにもかかわらずゼネコンに再見積もりを依頼、1.5倍の約128億円にしたというもの。 この数字を元に「人工島で新設する方が建て替えより安い」と結論付け、移転決定の重要な根拠とした。 マル秘文書(1月19日付)では、想定される会議進行の留意点として「1.5倍となった経緯については、事実関係の説明の後、手続きが不適切であったことを認め、新たな見積もりの提出を促す」とある。 つまり、この件が委員会で不適切と判断されることはすでに市側も想定済みなのだ。 こうした点を考慮すると委員会が「決定過程に問題あり」との結論にいたる可能性は十分あるだろう。 たとえ意見が割れて全会一致とならなくても、前出の文書に従えば各論として併記される。そうなれば高島市長は極めて難しい判断を迫られることになるが-。
こども病院問題 検証始まる(2)市は「試算不適切」想定 [2011年3月3日10:45更新]
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「問題あり」と結論付ける可能性十分