こども病院問題 検証始まる(1)マル秘文書配布が発覚 [2011年3月2日09:18更新]

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(11年2月号掲載)

1月30日に開かれた検証委員会福岡市立こども病院(中央区)の人工島移転事業をめぐり、その決定プロセスを検証する調査委員会がこのほど始まった。

検証作業は高島宗一郎市長が選挙戦で掲げた公約であり、「市民目線の市政へ」と訴えた市長の“試金石”。

だが議事進行に関する「マル秘文書」を一部の委員だけに渡していたことが発覚、出だしからつまずいた形となった。

ただ、この文書から、市側は現地建て替え費用の試算が不適切だと判断される事態をすでに想定していることが明らかに。こうした点も含め、調査委が「過程に問題あり」とする可能性は高いと見られる。

調査委の結論は3月末をめどに出る予定だが、はたして高島市長の最終判断は─。  



 

「こども病院の人工島移転は市役所の中だけで決められた感があり、それが市政への不信感へとつながっている。検証作業では結論にいたる過程はすべてオープンにし、その結論を尊重した上で、最終的には私の責任で決める」

1月30日、市役所15階の講堂。第1回移転計画調査委員会の冒頭、報道陣や100人を超える一般傍聴者を前に、高島市長はこう挨拶した(写真)。 

外部の専門家や移転に反対する患者家族代表、抽選で選ばれた一般市民など計11人で構成される調査委員会。

この日は各委員から「安全・安心の医療環境を整えることが第1」「小児医療に地域の隔たりがないように」「高度医療への対応も視野に入れるかについても議論すべき」などといった意見が出された。

高島市政の試金石  

こども病院移転問題に対する市民の関心は非常に高い。吉田宏前市長は06年の市長選で「白紙に戻す」と公約に掲げながら07年には人工島への移転を決定。これが市民の反発を買い、昨秋の選挙で「移転をいったん凍結し決定過程を検証し直す」とした高島市長に敗れる大きな要因となった。 

委員会はすべて公開され、議論の様子はインターネットで生中継される。委員の人選も、識者や医療従事者だけでなく反対派住民や抽選で選んだ市民を加えるなど、妥当なところであろう。

「重要なのは自治体の発信力」「市民目線の市政を」と訴えてきた高島市長。それを具体化した形で市民に示す最初の機会である検証作業と、これを踏まえた市長の最終判断は、今後の高島市政を占う上で極めて重要である。 

だがこの委員会の直後、「オープンな検証作業」は思わぬ形でつまずくことに。福岡市側が一部の委員だけに、議事進行の手順や留意点を記した「マル秘文書」を渡していたことが報道によって明らかになったのだ。

(続く)